Vol.58 No.4 July 2010
原著・基礎
Streptococcus pneumoniaeおよびHaemophilus influenzaeのβ-lactam薬に対するin vitroにおける耐性獲得に関する検討
1)東邦大学医学部看護学科感染制御学*
2)三菱化学メディエンス化学療法研究室
3)北里大学北里生命科学研究所
要旨
Streptococcus pneumoniaeおよびHaemophilus influenzaeのATCC株および臨床分離株を対象にceftriaxone(CTRX)および各種β-lactam薬の連続接触によるin vitro耐性化について比較検討した。
S. pneumoniae 10株およびH. influenzae 10株を各種β-lactam薬含有寒天培地を用いて増量継代培養法で10回まで継代し,元株および10代継代株に対するCTRXおよび耐性菌選択試験に用いた薬剤のMICを微量液体希釈法にて測定した。また,薬剤接触前後のPBPs遺伝子変異を解析,比較した。
S. pneumoniae 10株に対して同薬のMICが4倍以上上昇した株数は,amoxicillin(AMPC)およびcefotiam(CTM)によって各4株,cefotaxime(CTX),CTRXおよびcefditoren(CDTR)3株,panipenem 2株で,薬剤間で大差はなかった。AMPC, CTXおよびCDTRとの連続接触によってMICが4倍以上上昇した数株において2種または3種すべてのPBPに接触前の元株と比較して複数のアミノ酸置換が認められた。一方,H. influenzae 10株についてMICが8倍以上上昇した株数は,CTX 7株,CDTR 6株,CTM 4株,meropenem 2株,CTRX 1株,amoxicillin/clavulanic acid 1株であった。CDTRおよびCTXとの連続接触によって8倍MICが上昇した各1株においてそれぞれVal592Alaおよび複数のアミノ酸置換が認められた。Penicillin系2薬およびCTRXは今回実験したβ-lactam薬のなかでは耐性化しがたい傾向が認められた。また,各薬剤のMICが上昇した菌株に対するCTRXのMICの上昇は小さかった。これらMICの上昇した株のPBPs遺伝子の変異との関連は特にみられず,他の耐性機序が関与していることが示唆された。
Key word
Streptococcus pneumoniae, Haemophilus influenzae, β-lactams, resistance, gene mutation
別刷請求先
*東京都大田区大森西4-16-20
受付日
平成22年3月31日
受理日
平成22年6月14日
日化療会誌 58 (4): 451-459, 2010