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書誌情報

Vol.58 No.5 September 2010

総説

緑膿菌菌血症における予後因子とinterleukin-1の役割

堀野 哲也

東京慈恵会医科大学感染制御部

要旨

 菌血症の3~7%の原因となる緑膿菌は,免疫不全宿主に重篤な感染症を引き起こすことが多い。また,緑膿菌は薬剤耐性という点からも難治性となることが多く,病院感染の原因菌として重要な細菌である。2003年4月から2007年12月までに行われた東京慈恵会医科大学附属病院での調査では,緑膿菌による菌血症を発症した89症例のうち91.0%は院内発症しており,白血病や慢性腎臓病などの免疫能低下を伴う基礎疾患を有する症例は85.4%を占めた。菌血症発症30日以内の死亡率は24.7%と高く,適切な抗菌薬投与による死亡率の改善はみられなかった。一方で,菌血症発症時における血小板減少,低アルブミン血症,複数菌感染が臨床的な予後不良因子であった。さらに緑膿菌菌血症における代表的な炎症性サイトカインの一つであるinterleukin-1(IL-1)の役割について動物モデルを用いて検討した。cyclophosphamideを投与し腸管からのbacterial translocationを誘発する内因性敗血症モデルではIL-1欠損マウスの感受性が有意に上昇したが,直接後眼窩静脈叢に緑膿菌を投与する菌血症モデルではIL-1欠損マウスと野生型マウスとの間に有意差は認められなかった。しかし,cyclophosphamide投与後に緑膿菌を同様に静脈内投与すると,IL-1欠損マウスの感受性が増大したことから,緑膿菌菌血症におけるIL-1の役割は免疫能低下時に増強されると考えられた。緑膿菌による菌血症の死亡率は抗菌化学療法の進歩にもかかわらず依然として高く,予後の改善のために,さらに緑膿菌の病原因子,抗菌薬の投与方法など多角的な検討が必要である。

Key word

Pseudomonas aeruginosa, bacteremia, prognostic factor, interleukin-1 (IL-1)

別刷請求先

東京都港区西新橋3-25-8

受付日

平成22年7月31日

受理日

平成22年8月10日

日化療会誌 58 (5): 547-554, 2010