Vol.58 No.S-2 October 2010
原著・基礎
小児における肺炎および中耳炎の分離菌に対するtosufloxacin tosilate hydrateのin vitroおよびin vivo抗菌活性
富山化学工業株式会社綜合研究所*
要旨
小児における肺炎および中耳炎の主要原因菌であるStreptococcus pneumoniae,Haemophilus influenzaeおよびMoraxella catarrhalisに対するtosufloxacin(TFLX)のin vitroおよびin vivo抗菌活性を検討し,以下の成績を得た。
1.小児由来臨床分離penicillin-susceptible S. pneumoniae(PSSP),penicillin-intermediate S. pneumoniae(PISP)およびpenicillin-resistant S. pneumoniae(PRSP)に対するTFLXのMIC90はいずれも0.25 μg/mLで,levofloxacin(LVFX),ciprofloxacinおよびnorfloxacinの1/64~1/4,cefditoren,cefdinirおよびcefcapene(CFPN)の1/64~1/2,clavulanic acid/amoxicillin(1:14)の1/8~4倍,azithromycin(AZM)の<1/512であった。
2.小児由来臨床分離β-lactamase-negative ampicillin-susceptible(BLNAS)およびβ-lactamase-negative ampicillin-resistant H. influenzae(BLNAR)に対するTFLXのMIC90はともに0.0078 μg/mLであり,他のキノロン系薬の1/8~同程度,β-ラクタム系薬の1/2,048~1/16,AZMの1/256であった。
3.小児由来臨床分離M. catarrhalisに対するTFLXのMIC90は0.0156 μg/mLで,比較薬中最も低かった。
4.TFLXはPRSPに対し1 MIC(0.125 μg/mL)以上で,BLNARに対し2 MIC(0.0156 μg/mL)以上で殺菌的作用を示した。
5.TFLXの4~16 MIC作用時におけるS. pneumoniaeおよびH. influenzaeの自然耐性菌出現頻度は,それぞれ,<9.3×10-10および<8.4×10-10で,LVFXと同様に低かった。
6.Sub-MIC濃度の各薬物存在下でS. pneumoniaeおよびH. influenzaeを7回継代した時のTFLXのMIC上昇は1~2倍で,LVFXと同程度であった。
7.S. pneumoniaeおよびH. influenzaeにおけるTFLXのmutant prevention concentrationは0.4および0.07 μg/mLで,LVFX(1および0.1 μg/mL)と同程度若しくは低かった。
8.PRSPによるマウス肺炎モデルにおけるTFLX投与群の肺内生菌数は<4.22 Log10 of CFU/gで,LVFX,AZMおよびCFPN投与群より少なかった。
Key word
tosufloxacin, antimicrobial activity, animal model, child
別刷請求先
*富山県富山市下奥井2-4-1
受付日
平成22年4月21日
受理日
平成22年8月23日
日化療会誌 58 (S-2): 1-11, 2010