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書誌情報

Vol.58 No.S-2 October 2010

原著・臨床

健康成人におけるtosufloxacin細粒の薬物動態および忍容性の検討

砂川 慶介1), 三上 洋2)

1)北里大学北里生命科学研究所特別研究部門
2)医療法人 平心会大阪治験病院

要旨

 キノロン系薬は,幼弱動物に対する関節障害が認められたため,小児に対する開発が控えられてきた。しかし,緑膿菌や腸管感染症の原因菌に対して有効な経口抗菌薬が望まれ,1991年小児用のnorfloxacin(NFLX)が発売された。
 近年,小児の呼吸器感染症や中耳炎の主要原因菌であるStreptococcus pneumoniaeHaemophilus influenzaeのβ-ラクタム系薬やマクロライド系薬耐性菌が増加し,経口薬では治療に難渋する症例が増加し,深刻な問題となってきた1)。医療現場からは耐性菌治療に対して外来使用ができる薬剤が切望され,厚生労働省の小児薬物療法検討会議にて検討する薬物として,小児感染症学会よりすでに成人の感染症に長期間広く使用されて有効性,安全性が確認され,かつ,小児に対する適応外使用例も報告2)されているtosufloxacin(TFLX)が要望医薬品として推薦された。
 本薬剤の開発にあたり,健康成人を対象にTFLX細粒100,200,300 mg(活性本体)の単回投与時の薬物動態を検討した。TFLX細粒の単回投与時の血漿中濃度は,各用量で平均2.4~2.6時間でCmaxに達し,T1/2は6.3~6.5時間であった。100,200および300 mg投与時のCmaxの平均は0.54 μg/mL,1.06 μg/mLおよび1.35 μg/mL,AUCは4.84 μg・h/mL,9.99 μg・h/mLおよび12.69 μg・h/mLであり,Cmax,AUCともに用量に依存して増加した。また,投与24時間後迄の累積尿中排泄率は,49.7%,43.1%および38.9%であった。
 有害事象は24例中4例に6件に発現し,すべて軽度であった。
 以上の結果よりTFLX細粒の忍容性に問題ないと考えた。また,TFLX細粒は錠剤の薬物動態と類似し,有効性が期待できること,単回投与ではあるが,細粒剤に特有な有害事象が認められなかったことから,注意を払いながら,小児患者を対象に試験を進めることは可能と考えた。

Key word

tosufloxacin, pharmacokinetics, safety

別刷請求先

東京都港区白金5-9-1

受付日

平成22年5月10日

受理日

平成22年8月6日

日化療会誌 58 (S-2): 24-31, 2010