Vol.58 No.S-2 October 2010
原著・臨床
母集団薬物動態-薬力学的解析に基づくtosufloxacin小児用細粒の臨床推奨用量
1)北里大学北里生命科学研究所特別研究部門*
2)元 名鉄病院小児科
3)慶應義塾大学医学部感染制御センター
4)川崎医科大学小児科学講座
5)JA北海道厚生連旭川厚生病院小児科
6)藤田保健衛生大学坂文種報徳會病院耳鼻咽喉科
7)自治医科大学さいたま医療センター外科系診療部耳鼻咽喉科
8)独立行政法人 国立成育医療研究センター外科系専門診療部耳鼻咽喉科
9)千葉県立保健医療大学健康科学部栄養学科
10)富山化学工業株式会社開発企画部解析グループ
要旨
フルオロキノロン系薬であるtosufloxacin(TFLX)細粒の小児感染症患者に対する適切な用量を検討するため,母集団薬物動態-薬力学的解析を行った。解析には小児の肺炎および中耳炎患者を対象とした2つの臨床第III相試験の222例から得られた416点の血漿中薬物濃度データを用いた。最終モデルとして,1-コンパートメントモデルのクリアランス(CL/F)および分布容積(Vd/F)に体重を付与した以下の式が得られた。
CL/F(L/hr)=7.98×(体重[kg]/15)0.719
Vd/F(L)=44.3×(体重[kg]/15)0.821
ka(/hr)=1.06
TFLXでの小児4 mg/kg投与の血漿中薬物濃度の予測値は,成人100 mg投与と200 mg投与の平均血漿中薬物濃度の間で推移した。また,小児6 mg/kg投与では成人200 mg投与の平均血漿中薬物濃度を上回って推移したが,小児4 mg/kg投与の薬物動態パラメータは,成人200 mg投与と類似した。
さらに,モンテカルロシミュレーションにより算出したTFLXの1回4 mg/kg又は6 mg/kgを1日2回経口投与時のAUC0-12/MICの2回分に相当するフリー体換算のfAUC/MICは,Streptococcus pneumoniaeが25~30以上,staphylococciおよびグラム陰性菌で100~125以上と報告されているターゲット値を大きく上回った。これらの結果は,S. pneumoniae, Moraxella (Branhamella) catarrhalis, Haemophilus influenzaeの臨床分離株に対する薬効を裏付けるものであった。
以上の結果から,小児の臨床推奨用量はTFLXとして1回4 mg/kgの1日2回投与は妥当な用量と考えた。
Key word
tosufloxacin, population pharmacokinetics, PK-PD, child, dose finding
別刷請求先
*東京都港区白金5-9-1
受付日
平成22年5月10日
受理日
平成22年9月2日
日化療会誌 58 (S-2): 69-77, 2010