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書誌情報

Vol.58 No.S-2 October 2010

原著・臨床

Tosufloxacin細粒10%の小児臨床試験における安全性の検討

堀 誠治1), 故 入交 昭一郎2), 小井戸 則彦3), 砂川 慶介4)

1)東京慈恵会医科大学薬理学講座
(現 同大学感染制御科)
2)元 川崎市立川崎病院(故人)
3)医療法人 川崎リウマチ・内科クリニック
4)北里大学北里生命科学研究所特別研究部門

要旨

 肺炎および中耳炎の小児感染症患者を対象とした2つのtosufloxacin(TFLX)細粒臨床第III相試験1, 2)の安全性解析対象となった肺炎63例,中耳炎172例の合計235例について,安全性を検討した。
 有害事象発現率は62.6%(147/235),副作用発現率は26.4%(62/235)であった。主な副作用は,嘔吐4.3%(10/235),下痢3.4%(8/235),軟便2.1%(5/235)であった。キノロン系薬の小児への使用で懸念される関節に関連する副作用としては,関節痛が2例認められた。程度は軽度であり,速やかに回復した。また,関節障害については,TFLX投与終了1年後までの発現状況を調査した。投薬終了1年後までに発生した関節に関連する有害事象の発現率は9.6%(22/230)であった。これらの症例のうち,因果関係が不明の1例を除き,全例が本薬剤との因果関係を否定された。このほか,重篤な副作用は認められず,すべての有害事象は投薬中止または終了後に速やかに軽快・消失した。また,痙攣や低血糖は認められなかった。
 薬物動態パラメータ(AUCおよびCmax)と副作用の関連を検討したところ,副作用全体の発現率はAUCおよびCmaxの上昇に伴い高くなる傾向が認められた。嘔吐,下痢(軟便含む),関節痛と薬物動態パラメータとの明確な関連性は認められなかったが,口渇,食欲不振とCmaxとが関連する可能性が認められた。
 今回の臨床試験成績からは,軽度の関節痛が2例に認められたものの,臨床上問題となる副作用は発現せず,TFLX細粒の小児に対する安全性に大きな問題はないと考えられた。しかし,国内では,小児の肺炎,中耳炎に適応を有する初めてのフルオロキノロン系薬であることも加味すると,臨床使用にあたってはリスクとベネフィットを勘案し,慎重に使用すべきと考えられた。

Key word

tosufloxacin, child, adverse event, safety

別刷請求先

東京都港区西新橋3-25-8

受付日

平成22年5月25日

受理日

平成22年8月20日

日化療会誌 58 (S-2): 78-88, 2010