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書誌情報

Vol.59 No.1 January 2011

総説

Small RNAによる多剤耐性制御

西野 邦彦1, 4), 山崎 聖司1, 2, 3), 西野-林 美都子1), 山口 明人2, 3)

1)大阪大学産業科学研究所特別プロジェクト研究部門感染制御学研究分野
2)同 生体応答科学研究部門生体情報制御学研究分野
3)大阪大学大学院薬学研究科細胞生物学分野
4)科学技術振興機構さきがけ

要旨

 細菌はさまざまな外界の環境に適応するための機構を保持している。外環境に適応するために細菌は環境の変化を感知し,それに応じて遺伝子の発現を制御している。遺伝子の発現は複雑で巧妙なさまざまなシステムによって制御されている。細菌において,アミノ酸をコードせず,自身で機能をもつ非翻訳型RNAの存在が知られている。特に,500塩基以下の低分子非翻訳型であるsmall RNAが,標的mRNAと塩基対を形成することにより翻訳を抑制または促進したり,mRNA分解を引き起こすことで,転写後の遺伝子発現制御に重要な役割を担っていることがわかってきた。ゲノム情報に基づくスクリーニングから,各種細菌において多くのsmall RNAが同定されてきた。また,これらsmall RNAが細菌のストレス応答,クオラムセンシングや病原性の調節に関与していることが報告されている。長らくsmall RNAと細菌の薬剤耐性との関係については不明であったが,近年,多剤耐性制御に関与していることがわかってきた。本総説では,small RNAによる細菌薬剤感受性調節の機構について,最近得られた知見を紹介する。

Key word

drug efflux system, multidrug resistance, small RNA

別刷請求先

大阪府茨木市美穂ヶ丘8-1

受付日

平成22年11月30日

受理日

平成22年12月8日

日化療会誌 59 (1): 1-7, 2011