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書誌情報

Vol.59 No.1 January 2011

原著・基礎

男子淋菌性尿道炎由来Neisseria gonorrhoeaeの各種抗菌薬に対する感受性とcefixime低感受性株penA遺伝子の解析

小野寺 昭一1), 清田 浩2), 遠藤 勝久3), 伊藤 博之4), 細部 高英5), 讃岐 邦太郎3), 吉田 正樹1), 高倉 真理子6), 高畑 正裕6)

1)東京慈恵会医科大学感染制御部
2)東京慈恵会医科大学附属青戸病院泌尿器科
3)JR東京総合病院泌尿器科
4)公田クリニック
5)細部医院
6)富山化学工業株式会社綜合研究所

要旨

 男子淋菌性尿道炎由来Neisseria gonorrhoeaeにおいて,2000年頃よりcefixime(CFIX)など経口セフェム系薬に対する感受性が低下する傾向が認められ,これらの株ではPBP2(PenA)の構造遺伝子penAの塩基配列がモザイク様に変異しているとの報告が多数ある。今回,東京慈恵会医科大学附属病院ならびに首都圏の関連施設で分離された新鮮臨床株(2009年株)の各種抗菌薬に対する薬剤感受性を測定し,1999年,2003年および2006年分離株の成績と比較するとともに,新たに確認されたCFIX低感受性株におけるpenA遺伝子の塩基配列を解析した。その結果,CFIXに対する感受性率は2006年まで96.6%以上で推移していたが,2009年株では47.4%に低下していた。注射セフェム系薬,ceftriaxoneに対する感受性率は,いずれの年度も100%であったが,2009年株ではMIC累積分布の低感受性化傾向が認められた。Spectinomycinに対しては,いずれの年度も感受性率は100%であった。Levofloxacinに対する2009年株の感受性率は5.3%であり,2006年株の17.0%より,耐性化がさらに進行していた。2009年分離CFIX低感受性株のpenA遺伝子はこれまでの報告と同様,他のNeisseria属菌種であるNeisseria perflava/siccaまたはNeisseria flavescenspenA遺伝子に近似したモザイク変異を含むことが認められた。
 今回検討した2009年株の日本性感染症学会のガイドラインで推奨されている薬剤に対する感受性率は100%であったが,経口および注射セフェム系薬では低感受性化の傾向が認められ,今後も継続したサーベイランスの必要性が示唆された。

Key word

mosaic, penA, susceptibility, cefixime, Neisseria gonorrhoeae

別刷請求先

東京都港区西新橋3-25-8

受付日

平成22年8月30日

受理日

平成22年9月17日

日化療会誌 59 (1): 17-24, 2011