ページの先頭です
ホーム > バックナンバー > 目次 > 書誌情報
言語を選択(Language)
日本語(Japanese)English

書誌情報

Vol.59 No.1 January 2011

ケーススタディ・第16回抗菌薬適正使用生涯教育セミナー

血尿,発熱,ショック状態で来院した50歳女性の1例

小川 拓1), 宇野 健司1), 笠原 敬1), 三笠 桂一1)

1)奈良県立医科大学感染症センター
2)札幌医科大学医学部泌尿器科

要旨

 感染性心内膜炎の診断は容易ではない。それはModified Duke Criteriaを見ると明らかである。Criteriaの「確定診断」を見ると,まず「大基準2項目」とある。しかし何の症状もない患者でいきなり「血液培養」と「心エコー」を行い感染性心内膜炎の診断をつけることなどまずありえない。すると自ずから「大基準1項目+小基準3項目」あるいは「小基準5項目」といった診断基準を適用せざるをえない。「小基準が数多く該当する」ということは,すなわち病変が進行していることを示すわけであるから,結局は診断基準そのものが「心内膜炎はそもそも簡単には診断ができるものではない」ということを言っているようなものである。「後医は名医」というが,このような厳しい状況のなかだからこそ,小基準をよく頭にいれ,疑わしい時には血液培養と心エコーを行うのが感染性心内膜炎診断のコツであろう。
 本症例では抗菌薬の使い方も問題となった。イミペネムとセフォゾプラン,レボフロキサシンにクラリスロマイシンと広域抗菌薬を半年にわたって使用したが治癒せず,ペニシリンGを6週間使用して治癒した。適切なスペクトラムの抗菌薬を,適切な用法・用量で使用するという抗菌薬適正使用の原則を明確に示した症例であった。

別刷請求先

奈良県橿原市四条町840

日化療会誌 59 (1): 34-37, 2011