Vol.59 No.2 March 2011
原著・臨床
成人の細菌性髄膜炎における抗菌薬治療と予後
1)旭川厚生病院小児科*
2)北里大学北里生命科学研究所
3)海老名総合病院小児科
4)富士重工業健康保険組合総合太田病院小児科
5)神戸市立医療センター中央市民病院小児科
6)川崎医科大学小児科学講座
7)伊都こどもクリニック
要旨
2004年4月から2007年1月までに108の調査協力施設で診療した466例の細菌性髄膜炎のなかから,検討委員会において診断が不確実な例,評価不能な例などを除外した成人66例について,初期治療薬と予後の関係を検討した。予後不良は発症後約3カ月の調査で四肢麻痺,てんかんなどの後遺症を有していた例と髄膜炎が直接死因であった例とし,23例(34.8%)が該当した。原因菌や初期症状による予後の差は認めなかった。予後不良群の年齢が65.9±10.1歳,予後良好群が55.7±16.7歳で有意差を認めた(p<0.01)。発症から治療までの期間が3日を越えるとそれ以前に治療開始した例に比べて有意に予後不良例が多かった(p<0.05)。臨床症状では予後良好群と不良群の間で有意差を認めたものはなかったが,検査所見では予後不良群が予後良好群より有意にCRP値が高い(p<0.05),髄液細胞数が少ない(p<0.01),髄液glucoseが低い(p<0.05),髄液proteinが高かった(p<0.05)。初期治療薬の効果ではmeropenemは16例中3例(18.8%),cefotaximeとampicillin併用は11例中4例(36.4%)が予後不良であった。多くの例で細菌性髄膜炎の治療量には達していないと思われる投与量で治療が行われていた。有意差は認めなかったが,原因菌がStreptococcus pneumoniaeに限ると髄膜炎治療量では14例中5例(35.7%),不適量では4例中3例(75.0%)が予後不良であった。
Key word
bacterial meningitis, Streptococcus pneumoniae, antimicrobial chemotherapy
別刷請求先
*北海道旭川市1条通24丁目
受付日
平成22年10月26日
受理日
平成22年11月15日
日化療会誌 59 (2): 158-162, 2011