Vol.59 No.2 March 2011
原著・臨床
Linezolidの使用状況と有効性・安全性の検討
1)慶應義塾大学薬学部実務薬学講座*
2)現 独立行政法人 国立病院機構久里浜アルコール症センター薬剤科
3)独立行政法人 国立病院機構東京医療センター薬剤科
4)同 小児科
5)現 慶應義塾大学医学部感染制御センター
要旨
Linezolid(LZD)は,優れた臨床効果を示し有用性が期待されている抗MRSA薬であるが,副作用としての血小板減少症が問題となっている。今回,LZD使用全症例を対象とし,有効性・安全性に関する検討を行った。対象は,独立行政法人国立病院機構東京医療センターにおいて,2006年~2008年にLZDの投与を受けた患者とし,患者背景,LZD投与理由,前治療抗MRSA薬,各臨床検査値等について診療録より調査した。106例(男性77例・女性29例),平均年齢65.0歳(18~91),平均投与日数16.4日(1~78)であった。投与理由は,前治療抗MRSA薬無効が最も多く,60例に前治療として他の抗MRSA薬が使用されており,vancomycinが最も多かった。
また,感染制御専門医による臨床効果判定が行われた症例は49例で,有効率は61%であった。LZDによる副作用は106例中25例37事象発現し,いずれも投与14日目までに多く発現していた。LZD投与中の血液検査値の最低値は,血小板値<10万個/μLが54例中10例,ヘモグロビン量<11 g/dLが6例中3例,白血球数<4,000/μLが70例中12例であった。投与開始前の血小板値が正常範囲(15~35万個/μL)であった症例における血小板減少発現因子について検討したところ,減少群では投与日数が有意に長く(p=0.017),年齢が有意に高かった(p=0.002)。
以上より,LZD投与の際は,早期からの血液検査値モニタリングが重要であるとともに,長期投与,高齢患者の場合には特に血小板減少発現に注意が必要であることが示唆された。
Key word
linezolid, MRSA, thrombocytopenia
別刷請求先
*東京都港区芝公園1-5-30
受付日
平成22年8月27日
受理日
平成22年12月27日
日化療会誌 59 (2): 163-171, 2011