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書誌情報

Vol.59 No.3 May 2011

原著・基礎

注射用抗菌薬の包括的処方管理システムの有用性―同様のシステムを導入した附属循環器医療センターにおける5年間の結果をふまえて―

小野寺 直人1), 櫻井 滋1, 4), 高橋 美枝子2), 山田 友紀3), 諏訪部 章4), 佐藤 譲1), 蠣崎 淳2, 5), 工藤 賢三2, 5), 高橋 勝雄2, 5)

1)岩手医科大学附属病院医療安全管理部感染症対策室
2)同 薬剤部
3)同 中央臨床検査部
4)岩手医科大学医学部臨床検査医学講座
5)同 薬学部臨床薬剤学講座

要旨

 抗菌薬適正使用の観点から,岩手医科大学附属病院(本院:1,051床)では,注射用抗菌薬の独自のレベル分類とレベルごとの理由書提出の義務化,抗菌薬の処方履歴カードの利用と払い出し処方日数の制限等を組み合わせた「注射用抗菌薬の包括的処方管理システム」を,2003年4月より導入した。導入後,広域抗菌薬の使用量および薬剤耐性菌の分離数は大きく減少し,注射用抗菌薬の購入額の削減を可能とした。今回,本システムの有用性を検証するために,本院に1年遅れて2004年4月より,同様のシステムを導入した岩手医科大学附属循環器医療センター(HC:115床)での結果から検討した。
 調査期間は,HCにおける本システム導入前(2003年度)から導入後(2004年度~2008年度)とし,注射用抗菌薬の使用量は,1,000患者入院のべ日数あたりの規定1日使用量の数値で表した(AUD)。調査項目は,注射用抗菌薬の使用量および総購入額,MRSAをはじめとする耐性菌の分離頻度,MRSA罹患率の推移等とした。HCにおける注射用抗菌薬の総使用量は,導入前の377.3±62.1から,導入後5年間はそれぞれ,299.4±41.2,261.6±37.4,310.5±70.6,295.7±43.1,298.7±29.0と有意に減少し(p<0.05),特にカルバペネム系,キノロン系,第4セフェム系等の広域抗菌薬は導入前と比較して大きく減少した。また,MRSA分離頻度(%)は月平均で,導入前の11.5±3.1から,10.0±3.0,6.2±2.0,5.3±2.3,4.9±2.3,3.7±2.2とそれぞれ有意に減少し(p<0.05),MRSA罹患率の明らかな低下とコスト削減を可能とした。
 以上の結果から,本システムは本院のみならず異なる施設のHCにおいても効果が認められ,その中長期的な有用性も改めて示唆された。

Key word

antibiotic stewardship, antimicrobial use density (AUD), drug resistance, use notification policy

別刷請求先

岩手県盛岡市内丸19-1

受付日

平成22年11月11日

受理日

平成23年2月14日

日化療会誌 59 (3): 285-292, 2011