Vol.59 No.5 September 2011
原著・臨床
小児急性中耳炎に対するfaropenem小児用製剤(ファロム®ドライシロップ小児用10%)の有効性・安全性・服用性の検討
1)藤田保健衛生大学坂文種報徳會病院耳鼻咽喉科*
2)いとう耳鼻咽喉科クリニック
3)うえだ耳鼻科クリニック
4)大鹿耳鼻咽喉科
5)おぜき耳鼻咽喉科
6)かさしま耳鼻咽喉科クリニック
7)酒井耳鼻咽喉科医院
8)坂井耳鼻咽喉科
9)さわだ耳鼻いんこう科クリニック
10)島田耳鼻咽喉科
11)鈴木耳鼻咽喉科
12)とね耳鼻咽喉科クリニック
13)医療法人 健伸会はっとり耳鼻咽喉科
14)はっとり耳鼻咽喉科
15)耳鼻咽喉科まつだクリニック
16)宮本ファミリー耳鼻科
17)もたい耳鼻咽喉科
18)やまだ耳鼻咽喉科
要旨
経口ペネム系抗菌薬製剤faropenem sodium(FRPM,ファロム®ドライシロップ小児用10%)の小児急性中耳炎に対する有効性,安全性および服用性を検討することを目的に,2009年8月から2010年3月にかけて,愛知県下17施設の医療機関において本調査を実施した。207例の調査票が回収され,安全性解析対象は167例,有効性解析対象は125例であった。
有効性解析対象例のうち,軽症23例,中等症73例,重症29例であった。細菌分離率はStreptococcus pneumoniaeが27.2%と最も多く,次いでHaemophilus influenzae 22.6%,Moraxella catarrhalis 12.9%であった。
有効性に関して,「化膿性中耳炎における抗菌薬の効果判定基準」を参考に臨床効果を判定した結果,有効率は92.0%(115/125例)であった。単独菌感染例の菌別有効率は,S. pneumoniae 100%(27/27例),H. influenzae 83.3%(10/12例),M. catarrhalis 75.0%(3/4例)であった。また,菌別の菌消失率は,S. pneumoniae 93.8%(15/16株),H. influenzae 90.0%(9/10株),M. catarrhalis 100%(4/4株)であった。
細菌学的効果に関して,投与開始時の細菌学的検査で175例から349株の臨床分離菌が得られた。分離菌別の菌消失率は,S. pneumoniae 97.6%(40/41株),H. influenzae 95.7%(22/23株),M. catarrhalis 93.3%(14/15株)であった。
薬剤感受性に関してはS. pneumoniaeのMIC90は0.5 μg/mLで,ペニシリン中等度耐性肺炎球菌(PISP)では0.25 μg/mL,ペニシリン耐性肺炎球菌(PRSP)は0.5 μg/mLであった。
H. influenzaeのMIC90は4 μg/mLで,βラクタマーゼ非産生アンピシリン耐性インフルエンザ菌(BLNAR)では4 μg/mL,βラクタマーゼ産生アンピシリン耐性インフルエンザ菌(BLPAR)は4 μg/mLであった。
安全性に関して,副作用発現率は4.8%(8/167例)であり,全例が非重篤な下痢であった。
服用性に関して,「のみにくい」「のめない」と評価された症例は4.6%(5/108例)であった。
以上より,本薬剤は,小児急性中耳炎に対して有用な薬剤であることが確認された。
Key word
faropenem, acute otitis media, child, postmarketing surveillance
別刷請求先
*愛知県名古屋市中川区尾頭橋3-6-10
受付日
平成22年11月26日
受理日
平成23年6月20日
日化療会誌 59 (5): 474-485, 2011