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書誌情報

Vol.59 No.6 November 2011

原著・臨床

硫酸アルベカシンの至適血中ピーク濃度を達成するための用量設定試験

木村 利美1), 砂川 慶介2), 戸塚 恭一3), 松本 哲哉4), 花木 秀明5), 相馬 一亥6), 鈴木 幸男7), 吉田 稔8), 大塚 喜人9), 根本 学10), 横田 裕行11), 東原 正明12), 織田 成人13), 秋山 暢14), 宮尾 直樹15), 行岡 哲男16), 大屋敷 一馬17), 新井 隆男18), 池上 敬一19), 一和多 俊男20), 小林 昌宏21)

1)東京女子医科大学病院薬剤部
2)北里生命科学研究所大学院感染制御科学府
3)東京女子医科大学感染対策部感染症内科
4)東京医科大学微生物学講座
5)北里大学抗感染症薬研究センター
6)北里大学病院救命救急センター
7)北里大学北里研究所病院呼吸器内科
8)帝京大学医学部附属溝口病院第四内科
9)亀田メディカルセンター臨床検査部
10)埼玉医科大学国際医療センター救命救急科
11)日本医科大学付属病院高度救命救急センター
12)北里大学病院血液内科
13)千葉大学大学院医学研究院救急集中治療医学
14)帝京大学医学部附属病院内科
15)医療法人社団 こうかん会日本鋼管病院呼吸器内科
16)東京医科大学病院救命救急センター
17)東京医科大学病院血液内科
18)東京医科大学八王子医療センター救命救急センター
19)獨協医科大学越谷病院救急医療科
20)東京医科大学八王子医療センター呼吸器内科
21)北里大学病院薬剤部

要旨

 Arbekacin(ABK)は2008年に1日1回150~200 mgの新たな用法・用量が承認されたTDMが必要な薬剤である。推奨される最高血中濃度(投与終了直後に9~20 mg/L)ならびに血中トラフ濃度(2 mg/L未満)を確保するための具体的な初期投与法が確立されていない。われわれは十分な臨床効果を得ることを目的に,血中ピーク濃度(投与開始1時間後に15~20 mg/L)を達成する投与量を設定し,血中薬物濃度を測定するプロスペクティブな用量検討試験を行った。ABKの投与は母集団薬物動態パラメータに基づき体重・腎機能・年齢を考慮した投与量早見表を作成し,1日1回30分で点滴静注投与し,採血は投与開始後3日以内に行い,以下の3ポイントとした;(1)投与開始直前(血中トラフ濃度),(2)投与開始1時間後(血中ピーク濃度),(3)投与開始6~10時間後。
 解析対象49例のうち,推定Ccrが60 mL/min/1.73 m2以上であった患者42例における実施計画書(投与量早見表)に基づいた初期投与量は平均326.2 mg/日および平均5.8 mg/kgであり,血中ピーク濃度は平均17.2 mg/Lであった。
 解析対象49例において,トラフ濃度は39例から得られ,87.2%(34/39例)が2 mg/L未満と良好であった。血中トラフ濃度が2 mg/L以上となった5例中3例において推定Ccrが60 mL/min/1.73 m2未満であったことから,患者数が十分ではないものの,腎機能低下患者における投与量設定は今後の検討が必要と考えられた。
 作成した投与量早見表は,推定Ccrが60 mL/min/1.73 m2以上であった患者において,血中ピーク濃度(15~20 mg/L)ならびに血中トラフ濃度(2 mg/L未満)達成に有用な投与法であることが確認された。適切な初期投与法の確立のために,今後も継続的な評価が必要であると考える。

Key word

arbekacin, dosage regimen, TDM, peak concentration

別刷請求先

東京都新宿区河田町8-1

受付日

平成23年9月8日

受理日

平成23年9月27日

日化療会誌 59 (6): 597-604, 2011