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書誌情報

Vol.60 No.1 January 2012

総説

薬理学的観点からみたPK-PD理論とブレイクポイント

猪川 和朗

広島大学大学院医歯薬学総合研究科臨床薬物治療学

要旨

 抗菌薬の薬物動態(pharmacokinetics:PK)と薬力学(pharmacodynamics:PD)に関する理論をふまえたブレイクポイントとは,PKの変動を考慮した確率論的シミュレーションにより治療効果を予測したうえで設定されたMIC値のことである。設定時にPK-PDパラメータの目標値を達成する確率を有効率と読み替える点が特徴的である。抗菌薬ごとに1つの値(1回用量・単一投与法での値)として決まっているのではなく,同一抗菌薬でも投与法,さらには患者特性や感染巣(移行部位)によって変化する。このため,原因菌MIC(測定値または推定値)以上のPK-PDブレイクポイント値を有する抗菌薬とその投与法を選択することで,最適な抗菌薬治療を実現しうる。PK-PDブレイクポイントは発展途上であるものの,抗菌薬治療を個別至適化する新しい意思決定基準としての役割が期待され,国内外の学術団体・機関レベルで検討されつつある。今後は,その臨床的な有用性や限界を検証していくことが重要である。

Key word

PK-PD, breakpoint

別刷請求先

広島県広島市南区霞1-2-3

受付日

平成23年11月11日

受理日

平成23年11月29日

日化療会誌 60 (1): 1-6, 2012