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書誌情報

Vol.60 No.1 January 2012

原著・臨床

臨床におけるトリコスポロン属の分離状況に関する検討

川澄 紀代1), 山岸 由佳1), 萩原 真生1), 藤巻 恵理子1), 杉田 隆2), 三鴨 廣繁1)

1)愛知医科大学病院感染制御部
2)明治薬科大学微生物学教室

要旨

 トリコスポロン属は,土壌中に分布する環境真菌で,日和見感染症の原因菌として重要であるが,偏重な抗真菌薬の使用によるブレイクスルー感染症としても重要である。今回,ミカファンギン(MCFG)使用量とトリコスポロン属の検出数との関連について調査を行った。2003年から2009年までの間に,愛知医科大学病院でトリコスポロン属が検出された62名81検体を対象に,患者背景,検出状況を検討した。また,同期間における抗真菌薬の使用本数および使用比率を調査し,トリコスポロン属の検出状況との関連性について検討した。関連性の統計学的解析は,Spearmanの順位相関係数を用い,Spearmanの順位相関係数rs>0.786を有意差あり(p<0.05)とした。検出検体は尿が最も多く,次いで痰,糞便であった。8種のプライマーを用いたRandom Amplified Polymorphic DNA解析では,医療関連感染も示唆される症例を認めた。各年におけるトリコスポロン属の検出患者数とMCFGの使用本数および使用比率との順位相関係数は,0.811(p=0.03)および0.613(p=0.14)であった。トリコスポロン属の検出数とMCFGの使用本数には,統計学的に有意な関連性(p<0.05)が認められ,相対的使用量より絶対的使用量において関連性が高いことが示唆された。MCFGは,深在性真菌症の予防および治療として広く使用されており,抗真菌薬の偏重な使用は,真菌のブレイクスルー感染症を引き起こすことが知られていることから,病院全体で抗真菌薬の絶対的使用量への配慮も必要であると考える。

Key word

Trichosporon, antifungal agent, prevalence

別刷請求先

愛知県長久手市岩作雁又1-1

受付日

平成23年1月11日

受理日

平成23年11月21日

日化療会誌 60 (1): 18-24, 2012