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書誌情報

Vol.60 No.3 May 2012

原著・基礎

Biofilmを形成したnon-typeable Haemophilus influenzaeに対するtosufloxacinの殺菌作用

杉浦 陽子, 高畑 正裕, 福田 淑子, 野村 伸彦

富山化学工業株式会社綜合研究所

要旨

 キノロン系薬tosufloxacin(TFLX)の小児中耳炎由来non-typeable Haemophilus influenzae(NTHi)に対するMICをamoxicillin(AMPC),clavulanic acid/amoxicillin(CVA/AMPC,1:14),cefditoren(CDTR),cefcapene(CFPN)およびtebipenem(TBPM)と比較した。また,biofilmを形成したβ-lactamase-negative,ampicillin(ABPC)-susceptible H. influenzae(BLNAS)およびβ-lactamase-negative,ABPC-resistant H. influenzae(BLNAR)に対するTFLXの殺菌的作用についてCVA/AMPC,CDTRおよびTBPMを対照に検討し,以下の成績を得た。
 1.BLNAS 51株およびBLNAR 58株に対するTFLXのMIC90はそれぞれ0.0078および0.0156 μg/mLで対照薬剤の1/8~1/512であった。β-lactamase-positive,ABPC-resistant H. influenzae 5株に対するTFLXのMICはいずれも0.0039 μg/mLで,対照薬剤の1/2~<1/16,384であった。TFLXは,β-ラクタム系薬耐性株を含む小児中耳炎由来NTHiに対して強い抗菌活性を示した。
 2.Biofilmを形成したBLNAS I-2716株およびBLNAR I-2580株に対し,TFLXは小児血中free-drug AUC0-24に相当する曝露量である100 MICおよびその1/10に相当する10 MICの24時間曝露により,生菌数を3.03~>6.46 Log10 CFU/mL減少させ,殺菌的作用を示した。また,走査型電子顕微鏡を用いた観察では,biofilmを形成していた細菌層の減少が認められた。一方,β-ラクタム系薬は殺菌的作用を示さず,細菌層の変化も認められなかった。
 以上,TFLXはbiofilmを形成したNTHiを原因菌とする難治性の小児中耳炎に対して有効性を示すことが期待された。

Key word

tosufloxacin, biofilm, non-typeable H. influenzae, in vitro bactericidal activity

別刷請求先

富山県富山市下奥井2-4-1

受付日

平成23年8月31日

受理日

平成24年2月21日

日化療会誌 60 (3): 327-334, 2012