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書誌情報

Vol.60 No.5 September 2012

原著・基礎

仮想的市場評価法を用いたロタウイルスワクチンに対する支払い意思額についての調査

小野 真1), 沼崎 啓1, 2), 池田 俊也3)

1)国際医療福祉大学大学院医療福祉学研究科国際感染症学領域
2)国際医療福祉大学病院小児科
3)国際医療福祉大学薬学部薬学科

要旨

 仮想的市場評価法(CVM)を用いて未就学児をもつ保護者を対象にロタウイルス(RV)ワクチンに対する支払い意思額(WTP)を推定することでRVワクチンを広く普及させるための方策について検討した。X市内の合計11施設の幼稚園または保育園に通園する就学前児童をもつ保護者1,366名を対象とした。RVワクチンについての簡単な説明を示し,RVワクチンが接種できるようになった場合,自己負担額としてアンケートで提示した金額で接種するか否かについてRVワクチン接種開始前の時点で調査をした。RVワクチンの価値付けのためにCVMを用いてRVワクチンに対するWTPを推計した。WTPの推計にはランダム効用モデルに基づいた対数線形ロジット分析を用いた。アンケートは二肢選択方式を用い,2,000円,3,000円,5,000円,8,000円,10,000円,20,000円,30,000円の7つの異なる提示金額のアンケート用紙を用意した。アンケート用紙配布数1,366通のうち980通が回収された。このうちWTPを表明した960通全体の推定WTPは中央値4,181円であった。また,70%および90%のワクチン接種率を達成できる自己負担額はそれぞれ2,073円および678円となった。世帯総収入を500万円および700万円を境にそれぞれ2群に分けてWTPを算出したところ,いずれの場合も高収入群でWTPは高値を示し,世帯総収入に応じた自己負担額を設定できる可能性を示唆する結果となった。以上のことから,ワクチン接種費用にかかわる自己負担額をできるだけ軽減することにより接種率向上につながることがCVMを用いたWTP推計から明らかになった。

Key word

rotavirus, vaccine, contingent valuation method, willingness-to-pay

別刷請求先

東京都港区南青山1-3-3

受付日

平成24年2月22日

受理日

平成24年6月26日

日化療会誌 60 (5): 535-540, 2012