Vol.60 No.5 September 2012
原著・臨床
葉書アンケートによるインフルエンザ治療実態調査
1)大阪市立大学大学院医学研究科呼吸器病態制御内科学*
2)ふじおか小児科
3)大阪市立大学大学院医学研究科発達小児医学
要旨
背景:2009年に新型インフルエンザ(A/H1N1)が流行し,2010年には抗インフルエンザ薬のlaninamivirとperamivirが使用可能となった。
目的:葉書アンケートによりインフルエンザ治療の実態を調査すること。
方法:2010年12月から2011年4月に迅速診断によりインフルエンザと診断された患者に,診断医が直接アンケート葉書を渡した。内容は患者背景(年齢・性別・合併疾患),使用薬剤,ワクチン接種歴,症状とその経過,薬剤の副作用とした。
結果:回収率は25.8%(249/963)で,合併疾患は気管支喘息が最も多かった。ワクチン接種により発熱の程度や有熱期間に変化はなかった。症状はA型で関節痛,B型で倦怠感・頭痛が多かった。使用薬剤はA型10歳以上ではoseltamivir(34%),zanamivir(31%),laninamivir(33%)が同程度で,9歳以下では圧倒的にoseltamivir(77%)が多かった。一方,B型は吸入薬が多かった。各薬剤間で解熱までの日数に有意差はなかったが,A型ではlaninamivirが早期に解熱する傾向があり,副作用も少ない傾向があった。
結語:laninamivirは効果と副作用が他剤と同等以上であり,単回吸入で完結する簡便さからインフルエンザ治療の中心になりうる薬剤と考えられた。また,今後のインフルエンザ治療では各薬剤の特性(投与経路や耐性など)を生かした薬剤選択を考慮すべきである。
Key word
influenza, questionnaire, laninamivir
別刷請求先
*大阪府大阪市阿倍野区旭町1-4-3
受付日
平成24年2月2日
受理日
平成24年6月15日
日化療会誌 60 (5): 541-548, 2012