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書誌情報

Vol.60 No.5 September 2012

原著・臨床

血液疾患に合併した発熱性好中球減少症に対するmeropenem 1 g 1日3回投与の臨床的有用性

池ケ谷 諭史, 岩崎 博道, 李 心, 高井 美穂子, 細野 奈穂子, 岸 慎治, 山内 高弘, 吉田 明, 浦崎 芳正, 上田 孝典

福井大学内科学(1)

要旨

 発熱性好中球減少症(febrile neutropenia;FN)は好中球減少時の発熱と定義され,起炎菌が判明する前に,速やかに広域スペクトラム抗菌薬による経験的治療を行うことが推奨されている。国内外のガイドラインで,高リスク患者に対する初期推奨抗菌薬として単剤ではカルバペネムまたは抗緑膿菌作用を有するβ-ラクタム系薬があげられているが,これまで日本国内ではcefepimeしかFNに対して保険適応が認められていなかった。2010年1月,meropenem(MEPM)にもFNの適応が追加され,1日最大用量も従来の2 gから3 gに増量された。そこで,今回われわれは血液疾患に合併したFNに対するMEPMの有用性について検討を行った。対象は2010年1月から2011年1月までの期間に,当院血液内科病棟入院中にFNを発症し,初期経験的治療としてMEPM 1 g×3回/日で投与された全56エピソード(30症例)である。効果判定は高久らの判定基準を用いて行った。年齢は平均64歳(45~79),基礎疾患は急性白血病33例,悪性リンパ腫15例,骨髄異形成症候群8例である。MEPM開始時の平均白血球数675/μL,好中球数60.3/μL,CRP 7.8 mg/dL,血液培養陽性例は10例(18%,CNS 5例,Escherichia coli 2例,MRSA 1例,Klebsiella pneumoniae 1例,Corynebacterium sp.1例)であった。治療効果は,著効62%,有効18%,やや有効16%,無効4%,著効有効合わせた有効率としては80%であった。MEPM開始から解熱までに要した期間は,平均4.18日であった。抗菌薬の追加または変更を要した症例は11例(20%),抗真菌薬が追加された症例は10例(18%)であった。有害事象は皮疹と下痢がそれぞれ1例ずつであり,重篤なものは認めなかった。FNに対するMEPM 3 gは,高い有効性に加えて日本人での忍容性も良好であり,非常に有用な治療であると考えられた。

Key word

febrile neutropenia, meropenem, empiric therapy

別刷請求先

福井県吉田郡永平寺町松岡下合月23-3

受付日

平成24年2月14日

受理日

平成24年5月24日

日化療会誌 60 (5): 549-552, 2012