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書誌情報

Vol.60 No.5 September 2012

原著・臨床

基質特異性拡張型β-ラクタマーゼ産生菌の分離状況―異なる2施設の分離状況の特徴とその要因分析―

小野寺 直人1), 山田 友紀2), 櫻井 滋1), 鈴木 啓二朗3), 諏訪部 章3)

1)岩手医科大学附属病院医療安全管理部感染症対策室
2)同 中央臨床検査部
3)岩手医科大学医学部臨床検査医学講座

要旨

 基質特異性拡張型β-ラクタマーゼ(extended-spectrum β-lactamase:ESBL)産生菌は薬剤耐性菌の一種で,院内感染対策上の大きな問題となっている。今回著者らは,岩手医科大学附属病院(以下,本院)および附属花巻温泉病院(以下,花巻)におけるESBL産生菌の分離状況とその要因を分析した。対象は2003年4月から2011年3月までの8年間における両施設の外来および入院患者から分離された各種臨床検体とした。調査項目は,ESBL産生菌の年度別分離数や分離率,耐性遺伝子型,院内伝播状況について分離された時期や場所でその関連性を評価した関連発生率などとした。本院におけるESBL産生菌は,2003年度の3件から2010年度の40件へと急激に増加し,分離率も同様の傾向を示した。外来におけるESBL産生菌の分離数は169件中37件と2割を超えていた。一方,花巻では時期によって分離数や分離率が増減し,外来での分離数は8年間で2件のみであった。ESBL産生Escherichia coliの耐性遺伝子型は,本院ではCTX-M-1グループ,CTX-M-9グループ,SHV型,TEM型が確認されたが,花巻ではCTX-M-9グループに偏る傾向が認められた(90.5%)。ESBL産生菌の関連発生率は花巻が27.9%で,本院の6.1%と比較して有意に高かった。両施設では,ESBL産生菌の分離状況や耐性遺伝子型などに特徴があり,施設間での違いが明らかとなった。その要因として,急性期病院の本院ではESBL産生菌の市中拡大による院内への流入などの影響が考えられ,高齢者や長期入院患者が多い花巻では院内伝播のリスクが高いことが示唆された。今後,院内感染サーベイランスの継続と施設に応じた的確な感染対策の指導,抗菌薬適正使用の提案などが必要と考えられた。

Key word

extended-spectrum β-lactamase, infection control, factorial analysis, Escherichia coli

別刷請求先

岩手県盛岡市内丸19-1

受付日

平成24年5月25日

受理日

平成24年7月18日

日化療会誌 60 (5): 553-559, 2012