ページの先頭です
ホーム > バックナンバー > 目次 > 書誌情報
言語を選択(Language)
日本語(Japanese)English

書誌情報

Vol.60 No.5 September 2012

市販後調査報告

長時間作用型ノイラミニダーゼ阻害剤laninamivir octanoate hydrateの市販後における吸入場所と吸入状況について

柏木 征三郎1), 吉田 早苗2), 山口 広貴2), 三井 典子2), 谷川 雅俊2), 塩境 一仁3), 山之内 直樹3), 塩澤 友男2), 山口 文恵2)

1)かしわぎクリニック
2)第一三共株式会社学術調査部
3)同 データサイエンス部

要旨

 ラニナミビルオクタン酸エステル水和物(以下,ラニナミビル)は,1回で治療が完結する抗インフルエンザウイルス薬であり,服薬の利便性,コンプライアンスの向上が期待される反面,患者が医師・薬剤師の指示どおり吸入できたかが重要となる。本剤の使用成績調査のなかで,吸入場所・吸入状況および有効性について調査し,2歳から94歳の3,524例について検討した結果,吸入場所は「医療機関」が39.9%と最も多く,次いで,「自宅」33.1%,「保険薬局」26.4%の順であった。また,「吸入できた+ほぼ吸入できた」と回答した割合は98.7%と良好な吸入状況であった。「吸入できた」と回答した割合は,「医療機関」93.8%,「保険薬局」86.8%,「自宅」81.9%の順に高かった。「あまり吸入できなかった」,「吸入できなかった」と回答した症例は,3歳16.7%,4歳8.8%,5歳4.9%と,5歳以下の小児において多く認められた。「吸入できた」,「ほぼ吸入できた」と回答した症例の主治医判定有効率は,おのおの98.0%,92.4%と高い有効性を示した。以上より,ラニナミビルは,臨床現場において,多くの症例で吸入可能であり,また,高い有効率を示したことから,服薬の利便性,コンプライアンスの向上の観点から,インフルエンザ感染症治療において有用な薬剤であることが確認された。また,ラニナミビルの有効性には吸入状況が影響し,吸入状況は自宅より医療機関や保険薬局において良好であったことから,医師・薬剤師等の医療従事者の指導のもと吸入することが重要であると考えられた。特に5歳以下の低年齢患者において服薬指導を充実させることで,本剤の有用性はさらに高まると考えられた。

Key word

long-acting neuraminidase inhibitor, laninamivir, inhalation status, postmarketing surveillance

別刷請求先

東京都中央区日本橋本町3-5-1

受付日

平成24年3月19日

受理日

平成24年7月18日

日化療会誌 60 (5): 573-579, 2012