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書誌情報

Vol.60 No.6 November 2012

総説

臨床微生物学トランスレーショナル・リサーチの推進と確立に向けた基盤研究―21年間の研究生活の軌跡―

山口 惠三

東邦大学名誉教授

要旨

 21年間にわたる東邦大学医学部微生物・感染症学講座での研究生活のなかで,トランスレーショナル・リサーチの視点からいくつかの知見を報告することができた。経腸管的緑膿菌性敗血症モデルを用いた解析がそのスタートであり,この実験から好中球減少患者に発症する敗血症の発症病態や新しい治療法に関する知見が得られた。また,緑膿菌の病原因子に及ぼすマクロライド剤の効果を検討するなかで,本剤が緑膿菌のクオラムセンシング機構を抑制する事実を見出した。この成績は,マクロライド剤の慢性気道感染症に対する有効性メカニズムの一つと考えられており,その応用による新しい感染症治療薬の開発が期待される。レジオネラの臨床疫学的および動物実験の成績から本症の発症病態,重症化のメカニズムに関するいくつかの知見を報告した。耐性菌および抗菌薬耐性メカニズムの研究のなかで最も重要な報告は,本邦で初めての基質拡張型β-ラクタマーゼ(ESBL)の検出であり,酵素学的な特徴の解析を加え“Toho型ESBL”として報告することができた。東邦大学在任中にさまざまな幸運に遭遇したが,その幸運をしっかりと研究に発展させ論文として仕上げてくれた教室員に心よりお礼を申し上げたい。

Key word

translational research, quorum-sensing, extended spectrum β-lactamase, Legionella, endogenous sepsis

別刷請求先

東京都大田区大森西5-21-16

受付日

平成24年8月21日

受理日

平成24年8月30日

日化療会誌 60 (6): 627-634, 2012