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書誌情報

Vol.60 No.6 November 2012

原著・基礎

In vitro pharmacokinetic modelを用いたStreptococcus pneumoniaeに対するgarenoxacinの殺菌効果および耐性化の検討

古家 由理1), 福田 淑子1), 野村 伸彦1), 石井 良和2)

1)富山化学工業株式会社綜合研究所
2)東邦大学医学部微生物・感染症学講座

要旨

 Garenoxacin mesilate hydrate(GRNX)400 mg,1日1回(q.d.)経口投与時のStreptococcus pneumoniaeに対する有効性を評価するため,ヒト血中蛋白非結合体濃度を再現したin vitro pharmacokinetic(PK)modelを用い,levofloxacin(LVFX)に感受性を示す野生株2菌株およびparC変異保有株(Ser-79→Phe)1菌株に対する殺菌効果ならびに耐性化の有無についてLVFX 500 mg,q.d.経口投与時と比較検討した。
 野生株およびparC変異保有株に対するGRNX 400 mg,q.d. 投与時のfree AUC/MICは≥246で,いずれの株に対してもLVFX 500 mg,q.d. 投与時より大きく,GRNXは強い殺菌効果を示し,耐性菌の出現を抑制した。
 野生株2菌株(S. pneumoniae D-5834株およびD-5580株)に対し,GRNX投与時の殺菌曲線上面積(area above the killing curve:AAKC)は,>108および>103 ΔLog10 CFU・h/mLで,いずれも強い殺菌効果を示し,24時間後に再増殖および感受性の低下したポピュレーションは認められなかった。一方,LVFX投与時のAAKCは>87.7および>114 ΔLog10 CFU・h/mLで,GRNXと同様,強い殺菌効果を示したが,24時間後に再増殖が認められた。
 parC変異保有株(S. pneumoniae D-5787株)に対し,GRNXおよびLVFX投与時のAAKCは>106および20.7 ΔLog10 CFU・h/mL,99.9%殺菌到達時間は2.24および4.74時間でGRNXは強く速やかな殺菌効果を示した。また,GRNX投与モデルでは24時間後の再増殖および感受性の低下したポピュレーションは認められなかったが,LVFX投与モデルでは24時間後に再増殖が認められ,GyrAに1アミノ酸変異(Ser-81→PheまたはTyr)を有し,感受性が1/8に低下したポピュレーションが検出された。
 以上,GRNXは,早期除菌および耐性菌出現抑制の観点からS. pneumoniaeを原因菌とする感染症に対して有用な薬剤であることが示唆された。

Key word

garenoxacin, in vitro, pharmacokinetic model, Streptococcus pneumoniae

別刷請求先

富山県富山市下奥井2-4-1

受付日

平成24年6月27日

受理日

平成24年9月12日

日化療会誌 60 (6): 635-642, 2012