Vol.60 No.6 November 2012
短報
顎口腔領域におけるlevofloxacin 500 mg経口投与後の組織移行性
慶應義塾大学医学部歯科・口腔外科学教室*
要旨
Levofloxacin(LVFX)500 mg経口投与後のヒト血液および顎口腔組織への移行性について検討した。患者10例(男性3例,女性7例)にLVFX 500 mgを経口投与し,下顎埋伏智歯の抜歯と同時に血清,歯肉,歯嚢,下顎骨中のLVFX濃度測定を行った。
LVFX投与後2.0~4.5時間後における血清,歯肉,下顎骨,歯嚢中の平均LVFX濃度は,それぞれ4.85±0.82 μg/mL,7.76±3.21 μg/g,7.38±2.04 μg/g,2.90±1.94 μg/gで,歯肉/血清,歯嚢/血清,下顎骨/血清の平均濃度比はそれぞれ1.58±0.53,1.54±0.50,0.59±0.35であった。
歯肉,歯嚢および下顎骨中の平均ピークLVFX濃度は,歯性感染症より分離された口腔連鎖球菌や多くの嫌気性菌のMIC90値を超えていた。以上より,LVFXは顎口腔組織への移行が良好で,LVFX 500 mg 1日1回投与は顎口腔領域の感染症治療において100 mg 1日3回投与と同等以上の有効性が期待できると考えられた。
Key word
levofloxacin, tissue penetration, oral tissue, mandible
別刷請求先
*東京都新宿区信濃町35
受付日
平成24年4月16日
受理日
平成24年8月24日
日化療会誌 60 (6): 643-645, 2012