Vol.60 No.6 November 2012
市販後調査報告
成人市中肺炎を対象としたclarithromycinの特定使用成績調査
1)杏林大学医学部第一内科学教室*
2)東北大学加齢医学研究所抗感染症薬開発研究部門
3)長崎大学医学部・歯学部附属病院第二内科
4)倉敷第一病院呼吸器センター
5)札幌南三条病院呼吸器内科
6)信楽園病院呼吸器科
7)中部大学生命健康科学部生命医科学科
8)奈良県立医科大学付属病院感染症センター
9)昭和大学医学部臨床感染症学講座
10)JRS2005検証委員会
要旨
成人市中肺炎症例を対象に,マクロライド系薬であるclarithromycin(CAM,クラリス錠®200)の特定使用成績調査を実施し,CAMの有効性と安全性を評価した。本調査は,2006年7月~2007年3月に,全国97施設が参加し実施された「成人市中肺炎診療ガイドライン(2005年改訂版)」の検証調査に登録された症例のうち,ガイドラインの初期治療基本フローチャートに基づきCAMが選択された262例を対象に行った。このうち,安全性解析対象症例は219例,有効性解析対象症例は153例であった。
有効性解析対象症例の平均年齢は45.3歳,重症度はガイドラインの重症度分類(A-DROP)に基づき分類し,軽症117例(76.5%),中等症32例(20.9%),重症4例(2.6%)であった。肺炎の群別は,非定型肺炎疑い109例,細菌性肺炎疑い39例で,肺炎球菌性肺炎が5例あった。治療は,ガイドラインを参考に担当医師の判断でCAM単剤またはCAMと他の抗菌薬との併用で行われ,平均10.0日間投与された。
有効率は,非定型肺炎疑い症例で96.3%(105/109例),細菌性肺炎疑い症例で84.6%(33/39例)であった。非定型肺炎疑い症例109例のうちCAM単剤治療は82例,その他の抗菌薬併用治療は27例で,有効率はそれぞれ97.6%,92.6%であった。一方,細菌性肺炎疑い症例39例ではCAM単剤治療は14例,その他の抗菌薬併用治療は25例で行われ,有効率はそれぞれ71.4%,92.0%であった。肺炎球菌性肺炎5例は,CAMの併用治療が行われ全例有効であった。
安全性は,安全性解析対象例219例中,副作用の発現したもの7例で,副作用発現率3.2%であった。主な副作用は臨床検査値異常4例などであり,重篤なものはみられなかった。
Key word
clarithromycin, community-acquired pneumonia, atypical pneumonia, postmarketing surveillance
別刷請求先
*東京都三鷹市新川6-20-2
受付日
平成24年5月25日
受理日
平成24年7月27日
日化療会誌 60 (6): 646-654, 2012