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書誌情報

Vol.61 No.2 March 2013

原著・臨床

高トラフ値に達した症例における腎障害発現に関するteicoplaninとvancomycinの比較検討

田久保 慎吾1), 竹末 芳生2), 高橋 佳子1), 中嶋 一彦2), 植田 貴史2), 木村 健1)

1)兵庫医科大学病院薬剤部
2)同 感染制御部

要旨

 Teicoplanin(TEIC)の目標トラフ値は,英国のガイドラインでは重症感染症に対し≧20 μg/mLが推奨されているが,その目標トラフ値に対する臨床的評価についての報告はvancomycin(VCM)と比較し少ない。そこで今回,TEICのトラフ値≧20 μg/mLの安全性についてVCMと比較し検討を行った。2009年1月から2010年12月の期間でTEIC,VCM使用例のうち,トラフ値が≧20 μg/mLに達した症例を対象とした。また,年齢<18歳と透析症例は対象外とした。当院のトラフ値≧20 μg/mLの発現状況と腎機能障害の発現率を調査し,腎機能障害に関与するリスク因子について検討した。調査期間中のVCMとTEIC使用例949例(VCM 589例,TEIC 360例)のうち,トラフ値が≧20 μg/mLに達した割合はそれぞれ70例(11.9%),96例(26.7%)であった。そのトラフ値≧20 μg/mLを呈した症例における腎機能障害発現率は,VCMで32例(45.7%),TEICで11例(11.5%)とVCMで有意に高率であった(p<0.001)。腎機能障害発現に関連する因子については,単変量解析で女性,肝疾患,人工呼吸器の装着であり,TEICの投与はリスク低減した。多変量解析でもTEICの投与はVCMの投与と比較し,腎機能障害発現のリスクを軽減させる因子であった(オッズ比0.145, 95%信頼区間0.062~0.342, p<0.001)。TEICはVCMと比較して,トラフ値≧20 μg/mLにおける腎機能障害の発現リスクは少なく,20 μg/mL前後の目標トラフ値設定が可能と考えた。

Key word

vancomycin, teicoplanin, nephrotoxicity, therapeutic drug monitoring(TDM)

別刷請求先

兵庫県西宮市武庫川町1-1

受付日

平成24年11月19日

受理日

平成25年1月23日

日化療会誌 61 (2): 157-161, 2013