Vol.61 No.6 November 2013
総説
β-ラクタマーゼの構造から考える耐性獲得機構―オキシイミノ系およびカルバペネム系β-ラクタム剤を中心に―
城西国際大学薬学部*
要旨
活性中心にセリンをもつクラスAおよびクラスCβ-ラクタマーゼは,全体構造および活性中心構造に類似性があるものの,脱アシル化の機構に大きな違いが存在する。すなわち,クラスA β-ラクタマーゼは活性中心ポケットの底から,上に打ち上げるようにアシル基カルボニル炭素を求核攻撃するのに対し,クラスCは溶媒側,つまり上方向から活性中心ポケット内に落ちてくるように求核攻撃を行う。また,β-ラクタム系薬が臨床的に利用されるようになって以来,新規β-ラクタム系薬が開発され,耐性菌が出現することが繰り返されている。その典型的な例が第三世代セファロスポリン系薬を主な標的とした基質特異性拡張型β-ラクタマーゼ(ESBL)やカルバペネム系薬を加水分解するカルバペネマーゼの出現である。本総説では,脱アシル化水に注目して,オキシイミノ系薬とカルバペネム系薬がなぜ,クラスA,Cβ-ラクタマーゼに対して安定なのか,その一方で,ESBLやカルバペネマーゼはなぜ分解活性を獲得したのかをX線結晶構造解析の結果より,検討していく。
Key word
drug-resistance, oxyimino cephalosporin, carbapenem, extended spectrum β-lactamase
別刷請求先
*千葉県東金市求名1番地
受付日
平成25年8月1日
受理日
平成25年8月28日
日化療会誌 61 (6): 479-491, 2013