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書誌情報

Vol.61 No.6 November 2013

原著・臨床

小児におけるlinezolid静注薬使用例37件の検討

深沢 千絵, 朽名 悟, 星野 直

千葉県こども病院感染症科

要旨

 Linezolid(LZD)は,2012年11月に小児への用法・用量が承認されたが,本邦小児における使用報告例は少ない。そこで,2007年6月~2011年10月に当院でLZDを投与した15歳未満の症例について,患者背景,LZD投与背景,有効性,有害事象等につき診療録をもとに後方視的に検討した。
 対象は26名37件,発症時年齢は0歳~15歳(平均6歳4カ月±73カ月)で,新生児2件を含む16件が1歳以下で,37件中36件で基礎疾患を有していた。対象感染症は,手術部位感染症が11件と最も多く,脳脊髄液シャント感染症も6件認めた。標的とされた菌種はmethicillin-resistant Staphylococcus aureus(MRSA)が31件と多かったが,methicillin-resistant coagulase negative staphylococci(MRCNS)も8件で標的とされていた。原因菌として検出されたMRSA 14株,methicillin-resistant Staphylococcus epidermidis(MRSE)6株におけるLZDのMICはvancomycin(VCM)に比べ同等か1~2管高かったが,VCMの効果不十分でLZDに変更し治療に成功した症例も認めた。VCMを含む他のMRSA治療薬からの変更例は14件あり,主な変更理由は前投薬の効果不十分が9件,有害事象が3件であった。また,LZD選択の理由としては,良好な組織移行性を考慮された例が多かった。臨床効果は,判定した31件のうちDICを併発して死亡した2件を除いた29件(94%)がやや有効以上の結果であった。有害事象としては,3件で白血球減少を認め,いずれも造血幹細胞移植後の患者であった。骨髄抑制は重篤とならず,LZD投与を中断せざるをえない症例はなかった。
 LZDは,小児においても有効性が高く,重篤な副作用なく使用されていた。小児領域においても,LZDを含む抗MRSA薬の使い分けを検討していく必要がある。

Key word

linezolid, child, MRSA, adverse effect, surgical site infection

別刷請求先

千葉県千葉市緑区辺田町579-1

受付日

平成25年3月18日

受理日

平成25年7月31日

日化療会誌 61 (6): 504-509, 2013