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書誌情報

Vol.62 No.2 March 2014

原著・臨床

尿路由来基質特異性拡張型β-ラクタマーゼ産生大腸菌の検出状況および薬剤感受性の検討

吉川 晃司1, 3), 森武 潤2), 鈴木 鑑2), 吉良 慎一郎2), 小出 晴久2), 清田 浩2), 堀 誠治3)

1)東京慈恵会医科大学葛飾医療センター感染制御部
2)同 泌尿器科
3)東京慈恵会医科大学感染制御部

要旨

 近年,尿路感染症において高い頻度で基質特異性拡張型β-ラクタマーゼ(extended-spectrum β-lactamase:ESBL)産生大腸菌が検出され,治療への影響が懸念されている。尿路由来ESBL産生大腸菌の検出状況を調べ,薬剤感受性を検討した。対象は2010年3月から2012年6月に当院で尿路から検出されたESBL産生大腸菌で,ESBL産生大腸菌検出例41例の患者背景を検討し,ESBL産生大腸菌41株のESBL遺伝子型,抗菌薬17薬剤に対するMIC値を測定した。ESBL産生大腸菌検出例は中央値76歳で,市中感染・院内感染の別は46.3%が市中感染であった。基礎疾患は糖尿病が市中感染例の21.1%,院内感染例の31.8%にみられた。市中感染例のなかで90日以内の入院歴が42.1%,介護施設入所歴が21.1%,維持血液透析が10.5%,尿路カテーテル使用が31.6%に認められた。ESBL遺伝子型は全例がCTX-M型で,CTX-M-9グループ産生株が31株(75.6%)と最も多く,うち14株が市中感染であった。CTX-M-1グループ産生株は6株中2株が,CTX-M-2グループ産生株は4株中3株が市中感染であった。ESBL産生大腸菌の市中での蔓延を裏付ける結果であり,継続的な調査による監視が必要と考えられる。
 薬剤感受性成績は,尿路感染症に高頻度に使用されるlevofloxacin,ciprofloxacinの耐性率が73.2%,78.0%であった。それに対しmeropenem, doripenemのMIC値はすべての株で≦0.06 μg/mLを示し,検討薬剤のなかで最も低く,感性率100%であった。β-ラクタマーゼ阻害薬配合薬のなかではtazobactam/piperacillin(TAZ/PIPC)がMIC50, MIC90ともに最も低く,カルバペネム系薬同様に感性率100%であった。Latamoxef, flomoxef,cefmetazole,faropenemおよびamikacinはMIC50 0.12~2 μg/mL,MIC90 0.25~4 μg/mL,感性率100%で,TAZ/PIPCとほぼ同等か,それ以上の成績であった。Sitafloxacinの抗菌活性は強く,MIC50 1 μg/mL,MIC90 2 μg/mLでありLVFXより16および8倍強かったが,感性率は73.2%であった。カルバペネム系薬や本検討で高い感性率を示した抗菌薬の薬剤感受性成績の動向に今後も注意を払う必要があると考える。

Key word

extended-spectrum β-lactamase, Escherichia coli , minimal inhibitory concentration, urinary tract infection

別刷請求先

東京都葛飾区青戸6-41-2

受付日

平成25年11月19日

受理日

平成26年1月10日

日化療会誌 62 (2): 198-203, 2014