Vol.62 No.4 July 2014
症例報告
チゲサイクリンとコリスチンの併用が奏功した多剤耐性アシネトバクター・バウマニによるカテーテル関連血流感染症の1例
1)北海道大学病院薬剤部*
2)同 血液内科
3)同 検査・輸血部
4)同 感染制御部
5)北海道大学大学院薬学研究院臨床薬剤学研究室
要旨
34歳男性,慢性骨髄性白血病のため骨髄移植を10年前に施行され,外来にて免疫抑制療法を継続中であった。肺炎のため入院し,levofloxacin等の投与でいったん軽快したものの,その後40.5℃の高熱およびCRPの上昇を認めた。血液培養とカテーテル先端より多剤耐性Acinetobacter baumannii(multidrug-resistant Acinetobacter baumannii;MDRAB)が分離され,カテーテル関連血流感染症と診断された。tigecycline(TGC)とcolistin(CL)の併用療法を開始したところ,翌日の血液培養で菌は陰性化し,患者の体温は平熱に復した。投与開始10日目にCRPは正常値となった。CLには重篤な腎機能障害が知られているが,治療経過中にCLのトラフ血中濃度を測定することにより安全に使用することができた。MDRAB敗血症は重篤な転帰にいたる場合が多く,TGCに加えCLを使用することで,より確実な効果を期待できるものと考えられた。
Key word
tigecycline, colistin, Acinetobacter baumannii, blood stream infection
別刷請求先
*北海道札幌市北区北14条西5丁目
受付日
平成26年3月1日
受理日
平成26年5月23日
日化療会誌 62 (4): 501-505, 2014