ページの先頭です
ホーム > バックナンバー > 目次 > 書誌情報
言語を選択(Language)
日本語(Japanese)English

書誌情報

Vol.62 No.6 November 2014

総説

クリプトコックス感染に対する免疫応答と免疫記憶―内因性再燃発症の可能性と免疫記憶との関連について―

川上 和義

東北大学大学院医学系研究科感染分子病態解析学分野

要旨

 Cryptococcus neoformansは日和見病原真菌であり,エイズなど細胞性免疫低下宿主では致死的な髄膜炎を起こし問題となる。C. neoformansに対する感染防御は細胞性免疫によって担われ,Th1-Th2サイトカインバランスが本真菌感染症の臨床経過に大きく影響することが知られており,近年では,Th17やI型インターフェロンによるこれらの制御機構の存在が明らかになりつつある。初期免疫応答は,宿主細胞のパターン認識受容体(PRRs)によって侵入した微生物に固有の分子パターン(PAMPs)が認識されることから始まる。このPRRsにはToll様受容体(TLRs)やCタイプレクチン受容体(CLRs)などがあり,C. neoformans感染ではTLR2,TLR9のようなTLRs,DC-SIGN,マンノース受容体,Dectin-2のようなCLRsの関与が報告されている。最近の臨床研究から,クリプトコックス感染症は,潜伏感染しているC. neoformansが細胞性免疫の低下により再活性化することで発症すると考えられつつある。内因性再燃発症が知られている結核では免疫記憶応答の破綻がその発症に深く関与することが明らかにされているが,クリプトコックス感染症でも同様に免疫記憶応答の成立機序とともに,免疫不全に伴う免疫記憶の破綻と再活性化との関連性について解明する必要があり今後の研究の進展が期待される。

Key word

host defense, cryptococcal infection, cytokines, pattern-recognition receptors, immune memory

別刷請求先

宮城県仙台市青葉区星陵町2-1

受付日

平成26年7月28日

受理日

平成26年8月19日

日化療会誌 62 (6): 674-680, 2014