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書誌情報

Vol.63 No.3 May 2015

総説

抗ウイルス薬開発の現状―抗ヘルペス薬Amenamevirと抗インフルエンザ薬Favipiravir―

白木 公康

富山大学大学院医学薬学研究部ウイルス学

要旨

 抗ヘルペス薬ASP2151(amenamevir)と抗インフルエンザ薬T-705(favipiravir)はわが国で開発された抗ウイルス薬で,それぞれ,ヘルペスウイルスのHelicase-primase阻害活性とRNAウイルスのRNA合成阻害活性を示す薬剤である。ASP2151は,これまでのヘルペスウイルスのチミジンキナーゼを介する抗ヘルペス薬と作用機序が異なる点と薬剤の血中動態が良いことから,性器ヘルペスの感染の完全阻止等が期待される抗ヘルペス薬として注目される。抗インフルエンザ薬であるノイラミニダーゼ阻害薬(NAI)は,感染細胞でのインフルエンザウイルスの増殖を許容するが,細胞表面から周辺への感染の広がりを阻害する。一方,T-705はウイルスRNA合成の際に,T-705のリボース三リン酸体がchain terminatorとして,RNAに取り込まれた部位でRNAの伸長を阻害して,新たなウイルスRNAの合成を阻害するので,細胞内に新たなウイルスRNAを合成させない。以上のように培養細胞レベルではRNA合成を阻害しウイルス負荷を減らすだけでなく,耐性ウイルスを生じない等,優れた特性を有する。感染動物における検討では,低力価感染では,NAIとT-705の治療効果の差異は認めない。しかし,oseltamivirが有効でない重症インフルエンザウイルス(高力価)感染にもT-705は有効であるという特徴をもつことから,T-705はインフルエンザウイルス感染の切り札として期待される。このような特性をもつT-705は,季節性インフルエンザに対する適応はなく,他の抗インフルエンザ薬が無効又は効果不十分であり,流行と感染重症度が懸念されるH5やH7等の新型インフルエンザが発生し,国が判断した場合に生産・使用できるという条件付き承認となった。また,T-705は,RNAウイルスのRNA合成阻害活性の共通性から,インフルエンザウイルスだけでなく,エボラウイルスや黄熱ウイルス等のRNAウイルスの感染動物モデルでも有効性が確認されている。

Key word

antiviral agents, nucleic acid synthesis inhibitor, herpes virus, influenza virus

別刷請求先

富山県富山市杉谷2630

受付日

平成26年11月12日

受理日

平成27年3月4日

日化療会誌 63 (3): 330-338, 2015