ページの先頭です
ホーム > バックナンバー > 目次 > 書誌情報
言語を選択(Language)
日本語(Japanese)English

書誌情報

Vol.63 No.5 September 2015

総説

マラリアの予防,診断,治療

渡邊 浩

久留米大学医学部感染制御学講座

要旨

 マラリアはハマダラカによって媒介される感染性疾患で,熱帯熱,三日熱,四日熱,卵形に加え,近年サルマラリアのヒト感染も知られるようになった。世界保健機関の推計によると世界97カ国でマラリアの伝播がみられ,年間1.4~2.9億人の罹患者と47.3~78.9万人の死亡者があるとされる。この大部分はサハラ以南アフリカにおける5歳未満の小児である。日本のマラリア報告数は,1999年の感染症法施行後増加し,1999~2001年は年間100例を超えたが,2002年以降減少し,2007年からは年間50例台で推移している。輸入感染症としてのマラリアは以前よりも減少してはいるが,渡航先でどの程度の日本人がマラリアを発症しているかは明らかになっていない。マラリアの症状は高熱,悪寒,筋肉痛,関節痛,下痢などであり,特に熱帯熱マラリアは短期間のうちに重症化することがあり,死亡する可能性が高いため悪性マラリアとも呼ばれている。マラリアの予防は“ABCD of malaria prevention”と呼ばれる4つの対策からなり,それぞれA:Awareness of risk(マラリア罹患リスクの認識),B:Bite prevention(防蚊対策),C:Chemoprophylaxis(予防内服),D:prompt Diagnosis and treatment(早期診断と治療)である。A,B,Dについてはすべてのマラリア常在地における基本的な対策であり,Cについては薬剤の副反応や価格と実際の感染リスクを評価したうえで適応を考慮するものである。従来,国内で認可されたマラリア予防薬はメフロキンのみであったが,2013年からアトバコン・プログアニル塩酸塩配合錠が使用可能となり,ドキシサイクリン(適応外)も含めわが国でも主要なマラリア予防薬が選択しやすくなった。一方,マラリアの診断法には末梢血ギムザ染色,PCR法あるいは迅速診断キットなどがあるが,手技や保険適応などの問題があり,また国内のマラリア症例数が少ないことからもマラリアの診断,治療については限られた医療機関でしかできないのが現状である。

Key word

malaria, chemoprophylaxis

別刷請求先

福岡県久留米市旭町67

受付日

平成27年1月8日

受理日

平成27年3月10日

日化療会誌 63 (5): 457-461, 2015