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書誌情報

Vol.63 No.6 November 2015

原著・臨床

Meropenem投与症例における肝・腎機能障害発現への高用量投与が及ぼす影響と発現要因に関する後方視的調査

中蔵 伊知郎1), 坂倉 広大1), 小川 吉彦2), 上野 裕之1), 中多 泉1)

1)国立病院機構大阪医療センター薬剤科
2)同 感染症内科

要旨

 Meropenem(MEPM)は,セフェム系薬などとの比較検討で,その高い忍容性が証明されている薬剤である。しかし,近年,3 g/日を超える高用量での投与における安全性の検討では,特に肝機能障害の発現が多かったと報告されている。今回われわれは,(1)MEPMの投与量による肝機能,腎機能にかかわる副作用発現頻度の違いについて,(2)MEPMの投与による肝・腎機能所見の変動要因の2つの項目に関して,単施設の後ろ向き観察研究で検討した。
 結果は,(1)3 g/日以上群(3 g/日:156症例,4 g/日:3症例,6 g/日:5症例)と3 g/日未満群(1.5 g/日:62症例,2 g/日:14症例)では,肝・腎機能障害の発現頻度に差は認められなかった。(2)肝・腎機能所見悪化の要因として,ロジスティック回帰分析を行った結果,アルカリホスファターゼの悪化では,「vancomycin(VCM)の使用」が,血清クレアチニンの悪化では,「カテコラミンの使用」がそれぞれの要因として挙げられた。いずれも併用薬という要因であり,MEPM由来の障害ではないと考えられるものの,これらの薬剤を併用されている症例では,循環不全もしくは併用薬剤による影響で肝・腎機能障害に関与していることが推察された。
 以上から,MEPMの高用量投与により副作用の頻度が上昇する可能性は低く,3 g/日以上の高用量MEPMの安全性は問題ないことが示唆された。また,MEPMによる肝・腎機能障害の要因として挙げられたVCM,カテコラミンが併用されている症例では特に注意深く副作用を観察する必要があると考えられた。

Key word

meropenem, adverse effect, drug induced renal dysfunction, drug induced liver dysfunction

別刷請求先

大阪府大阪市中央区法円坂2-1-14

受付日

平成27年3月25日

受理日

平成27年9月3日

日化療会誌 63 (6): 553-559, 2015