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書誌情報

Vol.64 No.2 March 2016

総説

腎盂腎炎発症のメカニズム解析と腎機能保護に関する研究の動向

松本 哲朗

産業医科大学名誉教授

要旨

 腎盂腎炎は小児,若年女性,高齢者および何らかの基礎疾患を有する患者に多くみられる感染症である。腎盂腎炎後の腎瘢痕形成は高血圧,腎機能障害,末期腎不全等につながる問題のある疾患でもある。腎盂腎炎においては,腎局所での組織障害が腎瘢痕形成の原因となる。尿路病原性大腸菌(UPEC)は,腎盂腎炎の主な原因菌となるが,UPECはP線毛やType 1線毛などの付着素等のvirulence factorを有しており,腎への定着と同時にinnate immunity反応を起こす。粘膜上皮では,UPECの付着に伴って,いくつかの刺激伝達系を介して,炎症性サイトカインの産生を促し,炎症細胞の局所への浸潤につながる反応を起こす。尿中サイトカインの測定は,腎盂腎炎の炎症の程度や瘢痕形成のマーカーともなりうる。腎瘢痕形成の予防は,腎盂腎炎治療において,重要な位置を占めるため,多くの薬剤について検討が行われている。ステロイド,COX-2阻害剤,活性酸素消去剤,ウリナスタチン,アンギオテンシンII受容体拮抗剤などが考えられている。より安全で有効な投与法や新規薬剤の開発が望まれる。

Key word

pyelonephritis, renal scarring, P pili, type 1 pili, innate immunity

別刷請求先

福岡県北九州市八幡西区医生ケ丘1-1

受付日

平成27年12月7日

受理日

平成27年12月16日

日化療会誌 64 (2): 233-238, 2016