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書誌情報

Vol.64 No.2 March 2016

総説

カンジダ性腹膜炎の診断,治療とその問題点

中嶋 一彦1), 竹末 芳生2), 一木 薫1), 植田 貴史1), 土井田 明弘1), 和田 恭直1), 土田 敏恵1)

1)兵庫医科大学感染制御部
2)同 感染制御学

要旨

 二次性,三次性腹膜炎ではカンジダ属の関与が重要である。カンジダ性腹膜炎の問題点は適切な診断である。術中検体や経皮的なドレナージから採取された膿や,腹腔内の壊死組織の検鏡検査に酵母様真菌が検出されればカンジダ性腹膜炎とただちに診断してよいが,ドレーンから検出される真菌は,コロニゼーションの1カ所として扱うべきとされている。したがって,消化管穿孔腹膜炎では,カンジダが検出されたとしても,すべてに治療対象となるわけではない。しかし,これではカンジダ性腹膜炎の感度が低いため,早期診断のためにカンジダのコロニゼーション数を考慮にいれたCandida scoreなどが示されている。しかし,培養検査は繁雑で検出まで長時間が必要なため,β-D-グルカンなど血清診断が日本では使用され,複数箇所からのカンジダ検出とともにβ-D-グルカンの陽性がエムピリック治療の開始基準とされている。カンジダ性腹膜炎の菌種の内訳は,Candida albicansC. albicans)が最も多く,次いでCandida glabrataとされる。近年,non-albicans Candidaが増加している。われわれの施設では,2006年~2013年までの間に40例のカンジダ性腹膜炎を経験した。検出菌株はC. albicansが26/38株(68.4%),C. glabrata 4/38株(10.5%)などであった。第一選択はホスフルコナゾールが19/40例(47.5%),キャンディン系薬が21/40例(52.5%)であり,ホスフルコナゾール使用例のうち4/19例(21.1%)は効果不良のためキャンディン系薬への変更が行われていた。臨床効果として治療効果の判定が可能であった33例においては,いずれも治療は有効であった。

Key word

Candida, peritonitis

別刷請求先

兵庫県西宮市武庫川町1-1

受付日

平成26年11月12日

受理日

平成27年11月26日

日化療会誌 64 (2): 239-243, 2016