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書誌情報

Vol.64 No.2 March 2016

原著・臨床

ムコイド型,非ムコイド型肺炎球菌性市中肺炎の比較

川崎 聡1), 青木 信樹1), 田端 篤2), 本間 康夫2)

1)社会福祉法人 新潟市社会事業協会信楽園病院呼吸器内科
2)同 臨床検査科

要旨

 肺炎球菌は,コロニー形態の違いにより,ムコイド型と非ムコイド型に分類することができるが,その臨床的意義についての検討はほとんどなされていない。そこで今回われわれは,2013年5月~2014年11月までに当院で入院診療した成人肺炎球菌性市中肺炎をムコイド型と非ムコイド型に分類し,患者背景,臨床経過,薬剤感受性,莢膜血清型を比較検討した。
 17例中6例がムコイド型,11例が非ムコイド型に分類された。ムコイド群の莢膜血清型は全例3型で,ペニシリン感受性であった。患者背景および使用抗菌薬は両群に差異を認めなかった。入院時検査では,ムコイド群でCRP値が有意に高く(ムコイド群28.4±12.4 mg/dL vs非ムコイド群13.7±7.0 mg/dL,p=0.006),胸部単純X線の浸潤影も広範囲に広がっていた。死亡例は両群とも認められなかったが,ムコイド群で初期治療失敗例が有意に多く(p=0.041),治療期間も長期間に及んだ(ムコイド群16.7±9.8日vs非ムコイド群8.1±2.0日,p=0.012)。
 以上の所見より,成人市中肺炎において,肺炎球菌がムコイド型であることは,非ムコイド型と比較して,重症化の一因になりうることが強く示唆された。好中球による貪食殺菌作用の阻害因子となる莢膜ポリサッカライド産生量の多い株がムコイド形態をとることから,整合性のとれた結果と思われた。

Key word

Streptococcus pneumoniae, mucoid strain, community-acquired pneumonia, capsular serotype, drug susceptibility

別刷請求先

新潟県新潟市西区新通南3-3-11

受付日

平成27年8月27日

受理日

平成27年10月29日

日化療会誌 64 (2): 280-285, 2016