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書誌情報

Vol.64 No.4 July 2016

短報

医薬品副作用被害救済制度からみた抗菌薬が関連した副作用被害の実態

佐藤 沙紀, 松元 一明, 黒田 裕子, 木津 純子

慶應義塾大学薬学部実務薬学講座

要旨

 医薬品副作用被害救済制度は,医薬品を適正に使用したにもかかわらず発生した重篤な健康被害の救済を目的とする公的制度であり,独立行政法人医薬品医療機器総合機構のホームページに救済給付の決定に関する情報が掲載されている。今回,抗菌薬による副作用被害の実態を明らかにするために,抗菌薬を原因薬剤に含む副作用被害救済事例を調査した。
 対象は,2004年4月から2014年3月の報告事例とし,抗菌薬の系統ごとに転帰や副作用症状等について集計・解析した。
 副作用被害請求総件数9,845件のうち,抗菌薬を含む件数は2,067件であり,支給1,940件,不支給157件であった。不支給事例として,“使用目的または使用方法が適正とは認められない”が61件あった。支給対象事例の副作用器官別大分類においては,皮膚および皮下組織障害1,010件,肝胆道系障害429件,免疫系障害312件などが主であった。転帰は,死亡225件,障害79件,軽快1,636件であった。死亡および障害事例は中毒性表皮壊死症,皮膚粘膜眼症候群,アナフィラキシーショックが多くを占めていた。また,支給対象となった抗菌薬単独使用の死亡事例では,免疫系障害(アナフィラキシーショック)が43件と最も多く,セフェム系薬15件,β-ラクタマーゼ阻害薬配合剤16件,カルバペネム系薬6件,グリコペプチド系薬2件,ホスホマイシン系薬2件,ペニシリン系薬1件,マクロライド系薬1件であった。
 今回の調査において抗菌薬の不適正使用例も見受けられたことから,抗菌薬使用時の問診,患者への副作用の初期症状の説明および具体的な対処法等の情報提供に加えて,抗菌薬のさらなる適正使用の推進が重要である。

Key word

adverse drug reaction, antimicrobial drug, adverse event

受付日

平成27年10月30日

受理日

平成28年2月25日

日化療会誌 64 (4): 656-662, 2016