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書誌情報

Vol.64 No.4 July 2016

症例報告

S-1+CDDP併用術前化学療法でpathological complete responseが得られた進行胃癌の1例

有末 篤弘1), 玉澤 佳之1), 鈴木 歩2), 野田 宏伸1), 御供 真吾1), 藤澤 健太郎1)

1)八戸赤十字病院外科
2)同 消化器科

要旨

 はじめに:進行胃癌に対する術前化学療法は,臨床試験で良好な結果が得られており,近年普及しつつある。今回,術前化学療法によりpathological complete response(pCR)が得られた傍大動脈周囲リンパ節転移を伴う進行胃癌の1例を経験したので報告する。
 症例:71歳女性,胃癌検診で異常を指摘され,二次精査の上部消化管内視鏡検査で胃前庭部に隆起性病変を認め,当院紹介となった。精査の結果,cStage IVの胃癌と診断,術前化学療法としてS-1+CDDP併用療法を2コース施行する方針とし,主病巣,リンパ節の縮小を認め,胃全摘術(D2+No. 16郭清)脾臓合併切除を施行した。組織学的効果判定はGrade 3(著効)であり,いずれの標本からも癌は検出されずpCRと診断した。術後1年間補助化学療法を行い,術後1年6カ月が経過するが,無再発生存中である。
 考察:pCRが得られた本邦報告例は散見されるが,本症例と同様に傍大動脈周囲リンパ節転移を伴う胃癌でpCRが得られた本邦報告例は検索し得た範囲で5例であった。今後は,臨床試験の結果を待つとともに,術前化学療法の適応となる症例の選別が重要であると考えられる。

Key word

gastric cancer, neoadjuvant chemotherapy(NAC), pathological complete response(pCR)

受付日

平成27年10月28日

受理日

平成28年2月29日

日化療会誌 64 (4): 663-667, 2016