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書誌情報

Vol.64 No.5 September 2016

総説

SGLT2阻害薬における尿路感染症―overview―

堀野 哲也

東京慈恵会医科大学感染制御部

要旨

 糖尿病は尿路感染症の危険因子であることが知られ,(1)尿路上皮への細菌の接着増加,(2)好中球の走化性,貪食能,殺菌能の低下,(3)神経因性膀胱による尿閉や残尿の増加,(4)尿糖の存在などがその理由として成書に記載されている。SGLT(sodium dependent glucose co-transporter)2阻害薬は,腎臓での糖の再吸収によって高血糖を改善するが,その反面,尿糖は増加するため,メタ解析によってSGLT2阻害薬投与群で尿路感染症の発症率が上昇することが示されたことは理解しやすいことと思われる。しかし,尿糖が尿路感染症の危険因子であるということについては,尿糖によって細菌の増殖が有意に増大したというin vitroの実験を引用しているものの,in vivoでは同様の結果は示されていない。また,SGLT2阻害薬と尿路感染症の関連について検討している論文の多くでは,尿路感染症の(1)診断基準,(2)分類,(3)危険因子の少なくとも3点において定義が曖昧であるという問題があり,SGLT2阻害薬が尿路感染症の危険因子であるかを判定するためには,さらなる検討が必要である。一方,糖尿病患者では無症候性細菌尿,膀胱炎,急性腎盂腎炎の罹患率が上昇すること,気腫性腎盂腎炎のような重篤な尿路感染症の発症に関与している可能性を考慮すると,SGLT2阻害薬投与の有無にかかわらず尿路感染症の発症に十分注意しなければならない。

Key word

diabetes mellitus, SGLT2 inhibitor, urinary tract infection, glycosuria

別刷請求先

東京都港区西新橋3-25-8

受付日

平成28年1月6日

受理日

平成28年5月11日

日化療会誌 64 (5): 719-725, 2016