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書誌情報

Vol.64 No.5 September 2016

総説

糖尿病に伴う下部尿路機能障害と尿路感染症

市原 浩司1), 高橋 聡2), 舛森 直哉1)

1)札幌医科大学医学部泌尿器科学講座
2)同 感染制御・臨床検査医学講座

要旨

 糖尿病患者は無症候性細菌尿を呈する割合が高く,基礎要因の一つに排尿障害の存在が考えられている。糖尿病によって引き起こされる何らかの下部尿路機能障害は患者の80%に認められるとされているが,無症候性の場合も多い。糖尿病による下部尿路機能障害は,糖尿病性神経因性膀胱と診断・表記されることが多いが,いわゆる膀胱知覚および運動機能を調整する自律神経障害に起因するもの以外に,高浸透圧多尿に伴う尿路上皮や排尿筋の変化,中枢神経系の障害なども要因となる。したがって,糖尿病患者の下部尿路症状は多彩であり,経時的に変化する。現時点では,糖尿病性神経因性膀胱そのものが尿路感染症発症の危険因子であるかについて,明確な答えは得られていない。また,無症候性細菌尿に対する予防的抗菌薬投与の意義は低いとされている。残尿量が多く,無症候性細菌尿を有する糖尿病患者においては,適切な排尿管理を行うこと,侵襲的な尿路操作を加える場合には監視尿培養の結果に応じて抗菌薬投与を行うことが,尿路感染症の発症リスクを低減し,発症した際にも重症化させないために重要である。

Key word

diabetes mellitus, bladder dysfunction, urinary tract infection

別刷請求先

北海道札幌市中央区南1条西16丁目

受付日

平成27年12月21日

受理日

平成27年12月25日

日化療会誌 64 (5): 730-734, 2016