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書誌情報

Vol.64 No.5 September 2016

総説

カルバペネム耐性腸内細菌科細菌(CRE)感染症の治療

下野 信行1), 西田 留梨子2)

1)九州大学病院グローバル感染症センター
2)同 検査部

要旨

 本邦では,カルバペネム耐性腸内細菌科細菌(CRE)の判定として,MICをもとにした基準が定められているが,欧米の基準と同一ではない。また,CREは,カルバペネマーゼ産生腸内細菌科細菌(CPE)と同義ではない。カルバペネム耐性のなかでも,感染対策および治療上問題となるのは後者である。CPEのなかでもそのタイプを知ることが重要で,KPC型,IMP型,VIM型,NDM型などがあり,本邦では,IMP型が主であるが,世界的に高度耐性傾向が強く,問題となっているのは,KPC型,NDM型である。これら高度耐性のCPEに対して,治療薬として用いられるのは,コリスチン,チゲサイクリン,ホスホマイシン,アミノグリコシド系薬などである。コリスチンやチゲサイクリンを単剤で用いるのではなく,2~3種類の薬剤を併用で使用するほうが治療成績に優れている。また,カルバペネム系薬剤もカルバペネム系に対する薬剤感受性成績が高度耐性(MIC>8 μg/mL)でなければ,治療薬として他の薬剤と併用することで効果が期待できる。CPEに対する新規抗菌薬として,β-ラクタマーゼ阻害薬を配合した薬剤,新規のアミノグリコシド系薬やテトラサイクリン系薬,シデロフォア構造を有する薬剤などが開発中である。そして最も重要なことは,このような耐性傾向の強い菌であっても,保菌に対しては治療をしないあるいは外科的ドレナージなどが可能な場合は施行するなどといった基本的な感染症診療は変わらないことを再認識すべきである。

Key word

carbapenem-resistant Enterobacteriaceae(CRE), carbapenemase-producing Enterobacteriaceae(CPE), carbapenems, Klebsiella pneumoniae carbapenemase(KPC), metallo-β-lactamase(MBL)

別刷請求先

福岡県福岡市東区馬出3-1-1

受付日

平成28年2月26日

受理日

平成28年4月19日

日化療会誌 64 (5): 742-749, 2016