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書誌情報

Vol.64 No.6 November 2016

原著・臨床

年齢により区分した急性単純性膀胱炎の分離菌と薬剤感受性の検討

大槻 英男, 藤尾 圭, 平田 武志, 村尾 航, 上原 慎也

我孫子東邦病院泌尿器科

要旨

 目的:我孫子東邦病院における2012年~2014年の急性単純性膀胱炎の各菌種分離頻度と薬剤感受性の推移,および年齢による抗菌薬感受性の差異を検討する。
 対象と方法:上記期間において急性膀胱炎症状を示し,104 cfu/mL以上の菌数を示した尿中分離菌株を対象とし,患者背景,分離菌の薬剤感受性を検討した。さらに,年齢に分けて分離菌および薬剤感受性の差異を検討した。
 結果:観察期間中304菌株が分離され,内訳はEscherichia coli 74.0%,Enterococcus属7.6%,Citrobacter属4.6%,Klebsiella属とStreptococcus属3.0%,Proteus属2.6%,Staphylococcus属2.3%と続いた。分離菌全体での抗菌薬感受性率は,cefcapene pivoxil(CFPN-PI)83.2%,cefazolin 79.9%,cefepime 88.2%,meropenem 98%,tazobactam/piperacillin 98%,gentamicin 81.3%,levofloxacin(LVFX)84.9%であった。年齢で区分すると,40歳以下(n=55)ではE. coliの分離頻度は60.0%でグラム陰性桿菌が63.6%,グラム陽性球菌が36.4%であった。一方,60歳以上(n=176)ではE. coliの分離頻度は75.0%でグラム陰性桿菌が87.5%を占めた。LVFX非感受性率(菌全体)は,40歳以下9.1%,60歳以上15.9%と高齢で高くなる傾向を示した(p=0.176)。E. coliのみに限定して比較すると,非感受性率は40歳以下6.1%,60歳以上19.7%(p<0.05)と,有意に60歳以上での非感受性率が高かった。その他の経口抗菌薬であるCFPN-PI,amoxicillin,minocycline,sulfamethoxazole-trimethoprimではE. coliへの感受性率に有意差はみられなかった。
 考察:2012年~2014年の急性単純性膀胱炎における尿中分離菌の頻度,薬剤感受性に大きな変化はみられなかった。キノロン耐性E.coliが約2割にみられたが,明らかな増加傾向は認めなかった。60歳以上でのキノロン耐性率が上昇しており,キノロン系薬投与量の累積の影響が考えられた。急性単純性膀胱炎に対しガイドラインに則った治療が望ましいが,キノロン耐性も考慮すると,経口セフェム薬も第一選択として積極的に使用していくべきと考えられる。特に,高齢者でグラム陰性桿菌が膀胱炎の原因菌と推定される場合には,キノロン系を避けた投薬が望ましいと考えられる。

Key word

acute uncomplicated cystitis, menopause, antimicrobials, Escherichia coli

別刷請求先

千葉県我孫子市我孫子1851-1

受付日

平成28年4月20日

受理日

平成28年7月4日

日化療会誌 64 (6): 791-795, 2016