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書誌情報

Vol.65 No.2 March 2017

総説

抗菌薬を概観する:過去,現在,そしてこれから

八木澤 守正

慶應義塾大学薬学部医薬品開発規制科学講座

要旨

 国際的な脅威となる耐性菌感染症に有効な新規抗菌薬の開発を促すため,日本化学療法学会に「創薬促進検討委員会」が設置され,学・官・産の緊密な協力体制の下に推進策を検討している。わが国は,1980年代~90年代には新規抗菌薬を世界に供給する主導的な立場であったが,世界的な抗菌薬開発の停滞のなかで主要な製薬企業が抗菌薬の研究開発からこぞって退いており,耐性菌に有効な新規抗菌薬の開発は望めない状況にある。そのような停滞状況を打破するため,わが国の政府は感染症対策関係閣僚会議を設置し,2016年4月には「薬剤耐性対策アクションプラン」を公表して多様な政策を具体化し始めている。
 一方,北里研究所の大村智栄誉教授が感染症に対する天然抗微生物薬の研究開発により2015年度のノーベル生理学・医学賞を受賞したことを契機として,国内には再び新規抗菌薬を創製する機運が高まりつつある。本総説では,わが国の抗菌薬発展の歴史的背景と抗菌薬の現状を概観し,欧米各国の現状と施策を解析して,将来の抗菌薬開発に向けてのわが国の動向を論じている。

Key word

antibacterial agent, antimicrobial resistance, multidrug resistance

別刷請求先

東京都港区芝公園1-5-30

受付日

平成28年10月18日

受理日

平成28年11月17日

日化療会誌 65 (2): 149-167, 2017