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書誌情報

Vol.65 No.2 March 2017

原著・臨床

抗菌薬のTDM実施に関する実態調査―TDM実施率と感染制御体制との関連性およびTDMの実施方法の抗菌薬TDMガイドラインとの比較―

松元 一明, 磯田 梨奈, 黒田 裕子, 横山 雄太, 木津 純子

慶應義塾大学薬学部実務薬学講座

要旨

 2012年に抗菌薬TDMガイドラインが作成された。今回,各施設の感染制御体制と抗菌薬のTDM実施に関する相関関係を調査し,さらに,抗菌薬TDMガイドラインと比較検討した。
 調査時期は2015年4から5月で,アンケートの回答は391施設から得た(回収率39.1%)。TDM実施施設は84%であり,TDM実施施設は感染防止対策加算取得施設,ICTまたはAST設置施設,感染制御認定/専門薬剤師取得者,抗菌化学療法認定薬剤師取得者がいる施設で有意に多かった。各施設のVCM,TEICの目標値はガイドラインの目標値内に95%の施設で設定されていた。ABK,AMK,GM,TOBのピーク値はそれぞれ88%,79%,82%,85%,トラフ値はそれぞれ90%,75%,74%,72%が目標値内に設定されていた。TEICの初日と2日目の合計投与量を1,600 mgにしている施設は59%あった。ABKの腎機能正常患者への1日1回量は200 mgの固定用量が46%,AMKは15 mg/kgが74%,GM/TOBは5 mg/kgが50%/55%であった。VCM投与設計時にAUC24を確認しない施設は44%,毎回確認する施設は27%であった。透析患者へのVCMの初回投与量は1 gが31%であった。採血ポイントは透析前が84%であった。
 本研究より,感染制御体制とTDM実施率に相関があり,抗菌薬適正使用には,薬剤師の資格取得率の向上は重要であることが示唆された。アンケートの回答の多くが抗菌薬TDMガイドラインで推奨されている内容と整合性が取れており,ガイドラインが浸透していることが明らかになった。一方で,TEICのローディングドーズ,VCMの1日2回投与以外の投与設計時や無効時におけるAUCの確認ならびに透析時の初回投与量など,ガイドラインのさらなる周知と理解が必要であると考えられた。

Key word

TDM, guideline, glycopeptide, aminoglycoside

別刷請求先

東京都港区芝公園1-5-30

受付日

平成28年7月14日

受理日

平成28年11月21日

日化療会誌 65 (2): 175-182, 2017