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書誌情報

Vol.65 No.3 May 2017

総説

化学療法学会 あすへの提言―第1部 緒言と概説―

紺野 昌俊

帝京大学名誉教授

要旨

 ChemotherapyはEhrlichによって用いられた医学用語である。それ以来,化学療法剤は抗菌薬の代名詞のように扱われてきた。ことに化学合成による抗菌薬の大量生産は人類に多くの福音をもたらした。しかし,化学療法剤の開発には限界が見え始めてきた。人類はbenefitにのみ捉われ,riskについて無防備であったと言わざるをえない。
 著者は,本学会総会(2015年)において標題にかかわる特別発言を求められた。その内容は,(1)菌の薬剤耐性化,(2)閉塞状態にある新規抗菌薬の開発,(3)抗菌薬療法が背負う魔力と薬剤耐性化に対する認識,(4)学会が果たしてきた功罪,(5)多剤耐性菌と院内感染対策に片寄る学会の現状,(6)小児用経口抗菌薬の壊滅的崩壊,(7)抗菌薬に代わる抗感染症薬開発の取り組みである。その反面,医学教育における感染症に関連する講義の減少,感染症に関心を寄せる医師の減少,手許にない諸検査は他施設に依頼するといった風潮もみられ,その結果文献的な考察にのみ依存する症例報告が学会の風潮となってきたことは否めない。
 このままでは,抗菌薬の開発は枯渇するのみならず,抗菌薬無効の新たな感染症が出現する事態も否めない。そのために,今後の抗菌薬やワクチン開発に関連し,本学会会員に十分に咀嚼していただく事項が多いと考えた。長文となるので,第1部には「緒言と概説」を記した。第2部は,「抗菌薬開発にかかわる世界の動向」と題してその根拠となる詳細と引用文献を記述,第3部は「耐性化した細菌感染症に直面する課題」と題して記述することにした。

Key word

methicillin-resistant Staphylococcus aureus, penicillin-resistant Streptococcus pneumoniae, β-lactamase negative resistant Haemophilus influenzae, macrolide-resistant Mycoplasma pneumoniae, vaccination

別刷請求先

東京都文京区千石3-37-10

受付日

平成28年12月16日

受理日

平成29年1月26日

日化療会誌 65 (3): 426-444, 2017