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書誌情報

Vol.65 No.4 July 2017

総説

化学療法学会 あすへの提言―第2部 抗菌薬開発にかかわる世界の動向―

紺野 昌俊

帝京大学名誉教授

要旨

 抗菌薬の開発は世界的に限界に達しつつあるにもかかわらず,薬剤耐性菌の増加は感染症治療にさらなる脅威を与えている。2001年,米国CDCは“Combat Antimicrobial Resistance”と題する行動計画を発表した。Infectious Diseases Society of America(IDSA)もacademiaの領域を超えて“Bad Bugs, No Drugs”なる“Call to Action”を掲げ,FDAや連邦議会に働きかけた。2012年,FDAは“GAIN Act”を制定した。しかし,承認された抗微生物薬の多くは,毒性や用法・容量から適応症例は限定され,きわめて高額な市販品となっている。
 一方,本邦におけるシンポジウム“創薬を促進するための産官学連携”を拝聴した限りでは,厚生労働省(MHLW)所属のシンポジストの講演は現行の医療制度の「ほころび」を埋め合わせる政策を紹介することに精一杯で,創薬にかかわるお話にはいたらなかった。経済産業省(METI)のシンポジストの講演は,低分子の化学合成医薬品は輸入超過となっており,今後はバイオ医薬品の開発と海外への導出に力点をおくとの内容であった。その後,文部科学省・科学技術・学術審議会ライフサイエンス委員会(MEXT, Science & Technology council)からは「感染症に関わる研究体制の構築と人材の育成」が緊急の課題と指摘された。しかし,「脅威ある感染症や薬剤耐性化に対応する対策」は,厚労省や産経省がかかわる政策と合致しなければその解決の道は遠い。
 このような状況のなかで,日本化学療法学会はどのような対応をすべきなのであろうか。確かにMRSAによる院内感染の全国的拡大に伴い,他の感染症関連学会と連携して行ってきた院内感染対策委員会は大きな成果を挙げてきた。しかし,200床以上とそれ未満の医療施設における発症率には未だに格差がみられる。この格差はガイドラインの発行や講演会を繰り返すことで縮められるのであろうか。Empiric therapyには抗菌薬の適正使用にそぐわない問題が含まれている。この部ではMRSA感染症についてのガイドラインを例にあげ,今後のガイドラインのあり方について述べた。

Key word

methicillin-resistant Staphylococcus aureus,penicillin-resistant Streptococcus pneumoniae,β-lactamase negative resistant Haemophilus influenzae,macrolide-resistant Mycoplasma pneumoniae,vaccination

別刷請求先

東京都文京区千石3-37-10

受付日

平成28年12月16日

受理日

平成29年1月26日

日化療会誌 65 (4): 531-551, 2017