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書誌情報

Vol.65 No.6 November 2017

原著・臨床

膀胱全摘除術の尿管ステント抜去に伴う発熱性尿路感染症制御に向けた取り組みについて

那須 良次1), 小坂 紀子2)

1)岡山労災病院泌尿器科
2)同 検査科

要旨

 腸管を利用した尿路変向術を伴った膀胱全摘除術では消化管の開放により腸内常在菌汚染に伴う手術創感染(surgical site infection:SSI)が高率であることに加え,尿路の開放・再建に伴う術後の発熱性尿路感染(febrile urinary tract infection:f-UTI)の発生も多く術後感染症(post-operative infection:POI)には注意が必要である。当科でのPOIの発生状況とf-UTI制御に向けた取り組みを報告する。
 対象:2008年10月から2017年4月までに腸管を利用して尿路変向を行った膀胱全摘除術50例を対象とした(男性36例,女性14例,年齢51~85歳)。使用抗菌薬は,sulbactam/ampicillin 36例,cefazolin 4例,cefmetazole 9例,fosfomycin+amikacin 1例で術直前に開始し投与期間は原則として術後72時間以内であった。また,2009年7月以降の43例では術後7日目の尿培養に基づいて抗菌薬を選択し尿管ステント抜去時に数日間予防的に使用した。術後30日以内での症候性感染症の発生と尿管ステント抜去時の抗菌薬投与の予防効果を検討した。
 結果:SSI 7例(浅層4例,深層1例,体腔/臓器2例),MRSA血流感染1例,f-UTI 12例を認めた。f-UTIの発生時期は尿管ステント抜去前が4例,抜去後が8例であった。予防的抗菌薬投与の有無別に尿管ステント抜去後のf-UTIの発生頻度を比較すると,投与なしの7例では5例,71%であったのに対し,投与ありの43例では3例,7.0%と有意に低率であった(p=0.0008,Fisher's exact test)。
 結語:腸管を利用した尿路変向術を伴った膀胱全摘除術でのPOIの発生率は40%(20/50)であり,f-UTIを12例認めた。f-UTIのうち8例は尿管ステント抜去後に発生していたが,ステント抜去時に尿培養に基づいて感受性抗菌薬の予防投与を行うことで制御可能であった。

Key word

radical cystectomy, post-operative infection, antimicrobial prophylaxis, urinary tract infection

別刷請求先

岡山県岡山市南区築港緑町1-10-25

受付日

平成29年6月29日

受理日

平成29年9月21日

日化療会誌 65 (6): 806-811, 2017