ページの先頭です
ホーム > バックナンバー > 目次 > 書誌情報
言語を選択(Language)
日本語(Japanese)English

書誌情報

Vol.65 No.6 November 2017

原著・臨床

当院小児科における基質特異性拡張型β-ラクタマーゼ(ESBL)産生菌の検出状況

齋藤 義弘1), 坂本 和美2), 吉川 晃司3), 清田 浩4)

1)東京慈恵会医科大学葛飾医療センター小児科
2)同 中央検査部
3)同 感染制御部
4)同 泌尿器科

要旨

 日本でも基質特異性拡張型β-ラクタマーゼ(extended-spectrum β-lactamase,ESBL)産生菌による市中感染症が増加傾向にあり,病院内感染だけに留まらなくなってきている。小児科領域でもESBL産生菌による尿路感染症の報告が増加してきているが,小児における疫学情報は十分ではない。今回われわれは東京慈恵会医科大学葛飾医療センター小児科においてESBL産生菌の検出状況を調査した。2012年1月から2016年12月までの5年間に小児科から培養目的で提出された検体からESBL産生菌が81例の患者から83株検出された。年次推移では2015年以降の増加が著しかった。菌種別ではEscherichia coliE. coli)が92.7%と最も多く,検査材料別では糞便,尿からの検出率がそれぞれ3.4%(68/2,001),0.9%(10/1,154)であった。ESBL産生菌が検出された患者81例の年齢分布は日齢3から21歳(年齢中央値:2歳4カ月)で,6歳未満の乳幼児が多くを占めていた。ESBL産生菌による感染症例は6例で,5例が上部尿路感染症,1例が虫垂炎に合併した菌血症で,すべてE. coliが原因菌であった。対象期間中に当科で経験したE. coliによる上部尿路感染症は44例でESBL産生E. coliの占める割合は11.4%(5/44)であった。ESBL産生菌は小児医療においても感染症の原因菌になりうるとともに,市中の乳幼児の腸管内に存在していることが明らかとなった。医療関連リスクがない小児外来患者であってもESBL産生菌を念頭においた適切な抗菌薬の使用と院内伝播防止のための標準予防策および接触予防策の徹底が重要である。

Key word

extended-spectrum β-lactamase(ESBL), Escherichia coli, urinary tract infection, child, carrier

別刷請求先

東京都葛飾区青戸6-41-2

受付日

平成29年9月12日

受理日

平成29年9月25日

日化療会誌 65 (6): 812-816, 2017